エメラルドの檻①【オリジナル夢】
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西の果て、水の街——カリーナ。
旅人の青年・レオは、久方ぶりにたどり着いた文明の匂いに、ほんの少しだけ胸を高鳴らせていた。
馬車が行き交い、人々の喧噪が石畳に反響し、空には無数の旗がはためく。大きな広場では楽団が音を奏で、噴水の周りには笑い声が咲いている。
だが、その陽気さの奥に、何かが引っかかるような違和感があった。
「邪魔だ、どけッ!」
怒声が響いたのは、広場にほど近い裏路地だった。
人混みの隙間から、レオは怒鳴り声の主たちを見つけた。
屈強な男たちが数人、大きな荷車を押している。荷台には木の箱のようなものが積まれ、その上には厚い布が被せられていた。箱は鉄で縁取られ、どこか檻のような不気味さを醸している。
「おい、気をつけろってんだ!」
荷車の先を歩いていた男が石に躓き、体勢を崩した。
その拍子に布がずるりと滑り落ち、中身があらわになる。
中にいたのは、少女だった。
だが、ただの少女ではない。
腰から下は鱗に覆われ、透き通るようなエメラルドの尾が箱の中で揺れていた。
長い銀髪が水に浮かび、瞳には月光のような青が灯っている。
それは——人魚だった。
ガラスで封じられた箱の中で、彼女は恐怖に震えながら、外の世界に向けて必死に手を伸ばしていた。
誰か、助けて。
そんな声が聞こえた気がした。
レオと少女の目が合った。
一瞬だけ、時が止まったように感じた。
彼女の目は、明らかに助けを求めていた。
だがすぐに男たちは布を被せ直し、彼女の姿を隠してしまった。
「急げ、今夜の競りに間に合わねぇぞ。遅れたら旦那に殺される!」
男たちは怒鳴りながら、荷車を押して奥の道へと消えていった。
レオはその場に立ち尽くしていた。
胸の奥に、小さな棘が刺さったままだった。
——あれは、見なかったふりをしていいものなのか?
それとも、自分に何かできるのか?
街の喧騒は何も知らないように続いていた。
だが、レオの旅路は、その瞬間から静かに運命の音を変えていた。
