死神と聖女
夢主(あなた)の名前
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微睡みの中で、手を伸ばすように追い求めたものは何だろう。それは在りし日の思い出か、心を捧げた死の神へ抱く夢か-。
「起きろ。」
深く、低く、美しい声が響いた。背中と太ももに冷たい石の感触が伝わってくる。自分は眠っていたのだ、と自覚した少女がゆっくりと瞼を開き見上げれば、死の神の姿があった。
「ここで何をしている。勝手に出歩かず部屋に戻れ、と告げたはずだが?」
「ごめんなさい!少しだけ、眠ってしまいました……」
よく城内で眠りに落ちてしまう少女を見て、死の神は片割れの眠りの神を思い浮かべながら眉をひそめた。
「タナトス様……」
「かつての教会でも思い出して夢を見ていたのか。」
ステンドグラスの光を背にした死の神は、神々しさを漂わせながらも影のさした顔に暗い雰囲気をも纏っていた。
「教会にいたのは昔のことですから。今の私は、幸せですよ。」
-タナトス様のお傍にいられるのだから。-
その言葉を胸のうちで呟きながら、少女は僅かに口元を緩める。
「この冥王軍の中でそのように微笑む人間はお前くらいだろうな。分からぬ。」
今まで絶望に打ちひしがれる多くの顔を見てきた死の神にとって、理解し難かった。
「最初は怖かったのですが…タナトス様のいる場所なら、わたし…」
そう呟く夢子の頬は赤みを帯びていた。
-多くの人間に恐れられた死の神へ従順に、愛ゆえに寄り添う娘がいるらしい。-
そう冥闘士が噂をしていたことを把握しているタナトスは、不可解な愛ゆえに行動する夢子を見つめた。まっすぐに死の神を見つめる瞳は、恐怖ではなく僅かに光をたたえているように見えた。ステンドグラスを背にしたタナトスは、壁にもたれかかっている少女の身体を抱き抱えるように手を添える。
「あ、わ、私パンドラお姉様のところへ戻らなければっ……っ!?」
「お前の前にいるのは誰だ?…立場を弁えろ。」
動揺し身を起こそうとした少女を制し、タナトスは銀の瞳で少女を射抜くように見つめた。
「タナトス、さま……何をっ」
瞬間、少女は息をのんだ。光を背にした死の神は、暗い陰の中へ少女を閉じ込めるように抱き寄せた。
「お前はかつて"愛は死にも勝る"と、この俺に言ったな。証明してみるか?……堕ちた聖女よ。」
耳にふきこまれる彼の声に、どきりと少女の心臓が跳ねる。フリルが縁取られたワンピースの裾に手をかければ、少女は怯えながらも薄く唇を開き、頬を赤らめた。
「タナトスさま…」
腕に捕らわれたまま自分を見つめる少女に、タナトスの唇は少し歪んだ。
死の神に心酔する人間の娘……
タナトスは、夢子が常に傍にいる日々を認めたくないほどに当然のように受け入れている。夢子が自身の手元より離れることを……きっと彼は許さないだろう。
「起きろ。」
深く、低く、美しい声が響いた。背中と太ももに冷たい石の感触が伝わってくる。自分は眠っていたのだ、と自覚した少女がゆっくりと瞼を開き見上げれば、死の神の姿があった。
「ここで何をしている。勝手に出歩かず部屋に戻れ、と告げたはずだが?」
「ごめんなさい!少しだけ、眠ってしまいました……」
よく城内で眠りに落ちてしまう少女を見て、死の神は片割れの眠りの神を思い浮かべながら眉をひそめた。
「タナトス様……」
「かつての教会でも思い出して夢を見ていたのか。」
ステンドグラスの光を背にした死の神は、神々しさを漂わせながらも影のさした顔に暗い雰囲気をも纏っていた。
「教会にいたのは昔のことですから。今の私は、幸せですよ。」
-タナトス様のお傍にいられるのだから。-
その言葉を胸のうちで呟きながら、少女は僅かに口元を緩める。
「この冥王軍の中でそのように微笑む人間はお前くらいだろうな。分からぬ。」
今まで絶望に打ちひしがれる多くの顔を見てきた死の神にとって、理解し難かった。
「最初は怖かったのですが…タナトス様のいる場所なら、わたし…」
そう呟く夢子の頬は赤みを帯びていた。
-多くの人間に恐れられた死の神へ従順に、愛ゆえに寄り添う娘がいるらしい。-
そう冥闘士が噂をしていたことを把握しているタナトスは、不可解な愛ゆえに行動する夢子を見つめた。まっすぐに死の神を見つめる瞳は、恐怖ではなく僅かに光をたたえているように見えた。ステンドグラスを背にしたタナトスは、壁にもたれかかっている少女の身体を抱き抱えるように手を添える。
「あ、わ、私パンドラお姉様のところへ戻らなければっ……っ!?」
「お前の前にいるのは誰だ?…立場を弁えろ。」
動揺し身を起こそうとした少女を制し、タナトスは銀の瞳で少女を射抜くように見つめた。
「タナトス、さま……何をっ」
瞬間、少女は息をのんだ。光を背にした死の神は、暗い陰の中へ少女を閉じ込めるように抱き寄せた。
「お前はかつて"愛は死にも勝る"と、この俺に言ったな。証明してみるか?……堕ちた聖女よ。」
耳にふきこまれる彼の声に、どきりと少女の心臓が跳ねる。フリルが縁取られたワンピースの裾に手をかければ、少女は怯えながらも薄く唇を開き、頬を赤らめた。
「タナトスさま…」
腕に捕らわれたまま自分を見つめる少女に、タナトスの唇は少し歪んだ。
死の神に心酔する人間の娘……
タナトスは、夢子が常に傍にいる日々を認めたくないほどに当然のように受け入れている。夢子が自身の手元より離れることを……きっと彼は許さないだろう。
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