真実の愛をさがして
夢主(あなた)の名前
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外では雪が降り続いていた。私はかじかんだ手を擦りながらバルコニーのお掃除に勤しむ。少しでも役に立たないと追い出されてしまいそうで…私はただ神様の気紛れで連れてきたもらっただけの存在なのだから。
お部屋を整え廊下に出ると、こちらへ向かう静かな足音が聞こえた。
「タナトスさま…。」
私の大好きなかみさまはいつものように静かな面持ちで私のそばへ歩み寄ると、私の手に触れる。
「冷たいな。」
「あまりにもお外が寒くて…。冬ですもの。」
私はそこで常々気になっていたことをそれとなく尋ねた。
「あの…ペルセポネさまは今もいらっしゃるのでしょうか?彼女が冥界のザクロを食べたことで冬が訪れたのでしょう?」
「…お前はどう思う。冥妃は今もハーデス様の傍にいらっしゃると思うか?」
タナトス様の問いかけに私は少し考えてから答えた。
「ペルセポネ様が、ハーデス様を愛しているなら……でも」
でも、タナトス様がお仕えしているハーデス様はお話を聞く限り愛という概念に対し深い眼差しを向けていないように考えられた。冥界の王様として、死をもって地上を浄化する………それはある側面によれば人間への愛なのかもしれないけれど、神話に語られたようなペルセフォネ様を愛した冥王さまだとは思いにくかった。
「愛など幻想だ。特に人間にとっての愛という感情など愚かな遊びしか生まぬ。」
タナトス様は冷たく言い放ち、「死に優るものはないのだからな。」と怪しい笑みを浮かべた。私はタナトス様に身も心も捧げたい。死に魅入られ、死に誘惑され、美しい死の神様に縋った。一人にしないでという私のちっぽけなお願いを、ただの気紛れでも受け入れてくれた貴方様-。
それでも私はじんわりと熱を持ちながらこの胸に潜む感情を伝えずにはいられなかった。
「…タナトス様。」
私は恐る恐るタナトス様の手に触れた。
「もちろん神様から与えられる死は私たちにとって救いとなるでしょうね……でも、私はもう一つ死と同じくらい強いものを見つけたの。」
「何だ。言ってみろ。」
タナトス様は眉間に皺を寄せ、低い声で私へ投げかけた。私は唇を結び一呼吸置くと、タナトスさまの綺麗な瞳を見つめて燻った感情から生まれた言葉を吐き出す。
「…愛、です。私はタナトス様を愛しているからこそ魂を捧げたいの。」
「下らぬ恋愛ごっこでもするつもりか。お前を連れてきたのは哀れな魂をすくい上げてやる神としての慈悲に過ぎぬ。」
「わかっ、てます……でもこの気持ちだけお伝えしたかったのです。ごめん、なさいっ……きゃ!」
この場にいることが恥ずかしくなり立ち去ろうとした瞬間のことだった。
「言うようになったな…人間が。生意気にも一方的に浅ましい言葉を投げつけて立ち去るとは。」
「……っ、あ」
タナトス様は愉快そうに美しい指で私の顎わ掬いあげる。耳を塞ぎたくなるほどの自分の胸の鼓動とタナトス様にこんなかたちで問い詰められている事実に頭が追いつかず、私は震えながら彼を見つめた。
「夢子…「タナトス様」」
突如彼を呼ぶ声が響いた。
「ご報告が!………し、失礼ですが」
「良い。あちらで聞いてやろう。」
タナトス様はすっかり興味をなくしたように私から離れると、歩き出した。
「へえ………お前が。あまり熱を入れない方がいいんじゃねえか?」
「え?」
冥闘士の彼は私を一瞥し、にやりと笑った。
「そのうち神様から魅入られちまったら逃げられなさそうじゃん。ま、絶対無いとは思うけど程々にな。」
そう言い残し彼が立ち去った後、その言葉の意味を考えながら私は未だ続く胸の鼓動に唇をそっと噛み締めていた。
お部屋を整え廊下に出ると、こちらへ向かう静かな足音が聞こえた。
「タナトスさま…。」
私の大好きなかみさまはいつものように静かな面持ちで私のそばへ歩み寄ると、私の手に触れる。
「冷たいな。」
「あまりにもお外が寒くて…。冬ですもの。」
私はそこで常々気になっていたことをそれとなく尋ねた。
「あの…ペルセポネさまは今もいらっしゃるのでしょうか?彼女が冥界のザクロを食べたことで冬が訪れたのでしょう?」
「…お前はどう思う。冥妃は今もハーデス様の傍にいらっしゃると思うか?」
タナトス様の問いかけに私は少し考えてから答えた。
「ペルセポネ様が、ハーデス様を愛しているなら……でも」
でも、タナトス様がお仕えしているハーデス様はお話を聞く限り愛という概念に対し深い眼差しを向けていないように考えられた。冥界の王様として、死をもって地上を浄化する………それはある側面によれば人間への愛なのかもしれないけれど、神話に語られたようなペルセフォネ様を愛した冥王さまだとは思いにくかった。
「愛など幻想だ。特に人間にとっての愛という感情など愚かな遊びしか生まぬ。」
タナトス様は冷たく言い放ち、「死に優るものはないのだからな。」と怪しい笑みを浮かべた。私はタナトス様に身も心も捧げたい。死に魅入られ、死に誘惑され、美しい死の神様に縋った。一人にしないでという私のちっぽけなお願いを、ただの気紛れでも受け入れてくれた貴方様-。
それでも私はじんわりと熱を持ちながらこの胸に潜む感情を伝えずにはいられなかった。
「…タナトス様。」
私は恐る恐るタナトス様の手に触れた。
「もちろん神様から与えられる死は私たちにとって救いとなるでしょうね……でも、私はもう一つ死と同じくらい強いものを見つけたの。」
「何だ。言ってみろ。」
タナトス様は眉間に皺を寄せ、低い声で私へ投げかけた。私は唇を結び一呼吸置くと、タナトスさまの綺麗な瞳を見つめて燻った感情から生まれた言葉を吐き出す。
「…愛、です。私はタナトス様を愛しているからこそ魂を捧げたいの。」
「下らぬ恋愛ごっこでもするつもりか。お前を連れてきたのは哀れな魂をすくい上げてやる神としての慈悲に過ぎぬ。」
「わかっ、てます……でもこの気持ちだけお伝えしたかったのです。ごめん、なさいっ……きゃ!」
この場にいることが恥ずかしくなり立ち去ろうとした瞬間のことだった。
「言うようになったな…人間が。生意気にも一方的に浅ましい言葉を投げつけて立ち去るとは。」
「……っ、あ」
タナトス様は愉快そうに美しい指で私の顎わ掬いあげる。耳を塞ぎたくなるほどの自分の胸の鼓動とタナトス様にこんなかたちで問い詰められている事実に頭が追いつかず、私は震えながら彼を見つめた。
「夢子…「タナトス様」」
突如彼を呼ぶ声が響いた。
「ご報告が!………し、失礼ですが」
「良い。あちらで聞いてやろう。」
タナトス様はすっかり興味をなくしたように私から離れると、歩き出した。
「へえ………お前が。あまり熱を入れない方がいいんじゃねえか?」
「え?」
冥闘士の彼は私を一瞥し、にやりと笑った。
「そのうち神様から魅入られちまったら逃げられなさそうじゃん。ま、絶対無いとは思うけど程々にな。」
そう言い残し彼が立ち去った後、その言葉の意味を考えながら私は未だ続く胸の鼓動に唇をそっと噛み締めていた。