王子様はいらないよ
夢主(あなた)の名前
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昔むかし、遠い国に古い塔に一人の娘が閉じ込められておりました。娘は人間の両親のもとに産まれながら、冥府との強い結びつきをもつ魂を持ち、双子の神様によって連れ去られ大切に塔へ閉じ込められてしまいました-娘もまた、双子の神様を愛しておりました。
今日も塔の窓から美しい景色を眺める。美しく豊かな緑の森と、咲き乱れる色とりどりの花園……わずかに窓から手を伸ばせば肌を滑る心地よい風。くすぐったさに思わず微笑んだ時、背後から私を呼ぶ声が聞こえた。
「…今日も花園を眺めているのか。飽きないことだ。以前連れて行ってやっただろう?」
眠りの神ヒュプノス様は柔らかな金の瞳を細めて、私の頭をふわりと撫でた。ヒュプノス様の腰に手を回して抱きつくと、私の背にも大きく温かな手が回された。ヒュプノス様に抱きしめられると、微睡むような心地良さを感じてしまう。
「……ヒュプノス様、あの花園に行っては駄目なの?」
「駄目だ、夢子。お前にとって、外は我等がいなければ危険なのだから。お前はこの塔で務めを果たさなければならない。」
ヒュプノス様の金の瞳に影がさした。
「分かったわ。塔からひとりで出ないって約束する。」
「夜になれば、また塔から離れなければならない。あとはタナトスに任せておくから安心しろ。」
ヒュプノス様は優しく私の頬を撫でて、慈しむように見つめてくれた…。
夜の帳が降り、星々が散りばめられた夜空を月が照らす-。そんな夜空を窓から眺めながらタナトス様とお話する時間も、私にとって素敵な時間。でも、今日のタナトス様は少し怖かった。
「お前は最近塔の外ばかり眺めているな。」
「…花園へお出かけしたかったの。塔にいるのも楽しいのだけれど…」
「我等と過ごすのは不満か、人間の娘風情が大きく出たものだな。」
「ふ、不満なんかでは……!私は」
「お前を塔から出さぬのは勿論冥府のためでもある。だが……お前の魂は珍しい。他の神も狙うことだろう。もし捕まれば今より酷い目に遭うだろうな。」
「塔にいれば、ヒュプノス様とタナトス様たちのお傍なら安全なのでしょう?」
そう聞いた私へタナトス様は「ああ」と満足そうに頷いた。
「お前が塔から出るくらいなら、永久に魂も縛りつけておかねばならなくなるからな。」
タナトス様は私を優しく抱き寄せ、囁いた。とても恐ろしい言葉を言われているはずなのに、タナトス様がお傍にいると安心してしまう。
「そろそろ食事の時間だ。部屋を移るぞ。」
彼の美しい指先が私の唇をなぞった。
「ええ。」
ヒュプノス様とタナトス様は今日も私を守ってくれている。いち人間でしかない私をずっと庇護してくれるー。
最初は「塔に閉じ込められている」と思ったけど、「双子の神様と塔に守られている」-。
なんて幸せな日々でしょう。
それは王子様がお姫様を塔から救い出す物語とはちょっと違う、幸せで歪な物語-。
今日も塔の窓から美しい景色を眺める。美しく豊かな緑の森と、咲き乱れる色とりどりの花園……わずかに窓から手を伸ばせば肌を滑る心地よい風。くすぐったさに思わず微笑んだ時、背後から私を呼ぶ声が聞こえた。
「…今日も花園を眺めているのか。飽きないことだ。以前連れて行ってやっただろう?」
眠りの神ヒュプノス様は柔らかな金の瞳を細めて、私の頭をふわりと撫でた。ヒュプノス様の腰に手を回して抱きつくと、私の背にも大きく温かな手が回された。ヒュプノス様に抱きしめられると、微睡むような心地良さを感じてしまう。
「……ヒュプノス様、あの花園に行っては駄目なの?」
「駄目だ、夢子。お前にとって、外は我等がいなければ危険なのだから。お前はこの塔で務めを果たさなければならない。」
ヒュプノス様の金の瞳に影がさした。
「分かったわ。塔からひとりで出ないって約束する。」
「夜になれば、また塔から離れなければならない。あとはタナトスに任せておくから安心しろ。」
ヒュプノス様は優しく私の頬を撫でて、慈しむように見つめてくれた…。
夜の帳が降り、星々が散りばめられた夜空を月が照らす-。そんな夜空を窓から眺めながらタナトス様とお話する時間も、私にとって素敵な時間。でも、今日のタナトス様は少し怖かった。
「お前は最近塔の外ばかり眺めているな。」
「…花園へお出かけしたかったの。塔にいるのも楽しいのだけれど…」
「我等と過ごすのは不満か、人間の娘風情が大きく出たものだな。」
「ふ、不満なんかでは……!私は」
「お前を塔から出さぬのは勿論冥府のためでもある。だが……お前の魂は珍しい。他の神も狙うことだろう。もし捕まれば今より酷い目に遭うだろうな。」
「塔にいれば、ヒュプノス様とタナトス様たちのお傍なら安全なのでしょう?」
そう聞いた私へタナトス様は「ああ」と満足そうに頷いた。
「お前が塔から出るくらいなら、永久に魂も縛りつけておかねばならなくなるからな。」
タナトス様は私を優しく抱き寄せ、囁いた。とても恐ろしい言葉を言われているはずなのに、タナトス様がお傍にいると安心してしまう。
「そろそろ食事の時間だ。部屋を移るぞ。」
彼の美しい指先が私の唇をなぞった。
「ええ。」
ヒュプノス様とタナトス様は今日も私を守ってくれている。いち人間でしかない私をずっと庇護してくれるー。
最初は「塔に閉じ込められている」と思ったけど、「双子の神様と塔に守られている」-。
なんて幸せな日々でしょう。
それは王子様がお姫様を塔から救い出す物語とはちょっと違う、幸せで歪な物語-。
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