一章、束の間の安息地
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夜になった。ネルファンディアは眠れず、門の中なら自由に歩いていいと言われたので庭に座って一人ぼうっとしていた。すると、少し高台になっている場所にトーリンを見つけた。彼女がゆっくり近づいていくと、彼が歌を歌っていることに気づいた。
「寒き霧まく山なみをこえ
古き洞穴の地の底をめざして」
トーリンはその1節を歌うと、ネルファンディアに気づいて振り返った。彼女はトーリンの顔を見ながら続きを歌った。
「我らは夜明け前に旅立たねばならぬ
青く光る魔の黄金を探し求めて」
二人は並んで座ると、しばらく何も言わずに月を眺めた。
「何故、この歌を知っているのだ」
「昔、お父様が教えてくれたの。まさか、自分がそれを越えてここまで来たなんて、今でも信じられないけど」
「ああ、そうだな。………元より我らは出会わぬ運命だったのだろうか」
そうだとしたらどれほどに軽薄な人生だっただろう。ただ王座に就くためだけに生きてきた自分。トーリンにとっては彼女が生きるという喜びを教えてくれたようなものだった。
「はなれ山の頂に登るその時も、そなたと共に居たい」
「当然です。だって私はあなたの守護者ですから」
そういうことではない、とトーリンは伝えたかった。だが、いずれは来る別れが辛くなることを恐れて彼はそれ以上言うことが出来なかった。
こうして旅の仲間たちに訪れた安息の一時は、それぞれの想いを胸に過ぎていくのだった。
「寒き霧まく山なみをこえ
古き洞穴の地の底をめざして」
トーリンはその1節を歌うと、ネルファンディアに気づいて振り返った。彼女はトーリンの顔を見ながら続きを歌った。
「我らは夜明け前に旅立たねばならぬ
青く光る魔の黄金を探し求めて」
二人は並んで座ると、しばらく何も言わずに月を眺めた。
「何故、この歌を知っているのだ」
「昔、お父様が教えてくれたの。まさか、自分がそれを越えてここまで来たなんて、今でも信じられないけど」
「ああ、そうだな。………元より我らは出会わぬ運命だったのだろうか」
そうだとしたらどれほどに軽薄な人生だっただろう。ただ王座に就くためだけに生きてきた自分。トーリンにとっては彼女が生きるという喜びを教えてくれたようなものだった。
「はなれ山の頂に登るその時も、そなたと共に居たい」
「当然です。だって私はあなたの守護者ですから」
そういうことではない、とトーリンは伝えたかった。だが、いずれは来る別れが辛くなることを恐れて彼はそれ以上言うことが出来なかった。
こうして旅の仲間たちに訪れた安息の一時は、それぞれの想いを胸に過ぎていくのだった。