青学編
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『600℃の法則』
桜の開花予想とは一体どこから来るのだろう。
早春、沈丁花が夜気に香りを含み、椿や山茶花が生け垣に見え隠れし、梅や桃が満開になる頃、通学路にあるまだ硬い蕾の桜をあたしは思った。
「おはよう七星ちゃん」
「あ、乾先輩、おはようございます」
暖かな朝の陽を背中に浴びながら、いつもより少しだけ早く家から出て、のんびり花々を眺めていると先輩に声をかけられた。
「卒業式も、じきですね」
あたしはいつもの桜の枝から乾先輩に視線を向けると、朝日がちょっと眩しくて目を細めた。
「ああ、早いものだ」
陽の光にシルエットをにじませながら先輩もあたしが見ていた桜の枝を見上げた。
「七星ちゃん、桜の開花日って、どうやって割り出すか知っているかい?」
「え……」
あたしが最近ずっと気になっていたことを、乾先輩は口にしてくれた。
「先輩、ご存知なんですか?」
あたしがよほど興味津々な顔をしたのか、乾先輩は逆光眼鏡をキラリと光らせにんまりと微笑んだ。
「ああ、統計の部類に入るからね、たやすいことだ」
「統計……」
「それと気象データだ」
乾先輩の笑顔は、統計、データという言葉を口にするたび嬉しそうに輝く。
本当にデータマンなんだな、とあたしもつられて少し笑顔になる。