青学編
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いささかの覚悟を決めて口に出したあたしの言葉をさえぎると、リョーマくんは手をあたしに向けて開いた。
「……何?」
リョーマくんの手には何もない。
「いいから目をつむって」
「え…でも…」
戸惑う。リョーマくんと開いた手のひらを交互に見る。何をする気なんだろう…少しだけ不安が募(つの)る。
「いいから、早くして」
だんだんと校庭から人が少なくなっていく。あたしも早く教室へ戻らなきゃ、と焦りリョーマくんの言うように目を閉じた。
「…俺の手にはリボンがある。見えないけれど、ある。そのリボンをお前に贈る。お前は走れない。でも、心で走ってゴールのテープを切った。今日の1番はお前だ。そら、一等賞のリボン」
そう言うとリョーマくんは、あたしの手に見えないリボンを乗せた。
リョーマくんの手の暖かさ…ドキリ、とした。泣きそうになる。
「じゃ」
なのに、それだけでリョーマくんがあたしから離れていこうとしたのであわてて目を開けた。
「ちょっ…待って! 何か欲しいんじゃなかったの?」
二、三歩あたしから離れたリョーマくんが振り向いて笑った。
「気が向いたら、いつか貰いに行く」
リョーマくんが、さっきの折り返し地点の時のようにあたしに背を向けると昇降口に駆け出した。
「………」
その背中を見送りながら、あたしはそっと自分の手のひらを開けてみた。
見えないリボンがそこにある…。これはリョーマくんの心のリボンだ。
あたしとリョーマくんにしか見えないリボン。
そのリボンがじわっとにじんだ。涙の向こうでリボンが輝いた。
fin.