青学編
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おたおたとした感じで走って来た河村が勢いよくつまづくと、その手から離れたラケットが泉に落ちた。
もはや条件反射だ。すかさず女神はラケットを追った。
「あなたが落としたのは…」
「あ~と、あいにく俺が落としたのはどこでも巻き寿司が巻けるすだれ式ラケットなんだ」
「………」
女神のこぶしが震えて来た。そして、ゴゴゴ…と地の底からうなるような音がしたと思ったのも束の間、あれほど美しく澄んでいた泉の水がどす黒く沸き立ち、煮えくり返るように激しく波立った。
「わ…」
「やりすぎた…」
「かな」
「………」
「やぁ、どうなった?」
バシャバシャと波しぶきが沸き起こる中、様子を見に来た乾がただなす術もなく泉のほとりに立ち並ぶ4人の背中に声をかけた。
「あ、乾ってばラケット戻って来ないじゃん、どうすんの」
菊丸が少し唇を尖らせると乾に抗議した。
「俺はラケットが戻るとは言っていない。面白い物が見られると言っただけだ」
乾は愉快そうに言い、逆光眼鏡もキラリと光るだけだ。
「あっ!」
越前が泉を指差すと波立つ泉が静かになり、今度は一気に噴水のように吹き上がった。
「てっ!」
「何だっ!?」
「…っと」
「いでっ!」
「ほお」
泉から吹き出された水と一緒にそれぞれのラケットが、それぞれの頭に降って来たのだ。いや、戻って来たと言うべきだ…が…。
「…て~何これ、俺のラケット何だか重い…って、にゃーんだ!?」
菊丸はのけぞる。ガットが餅網のように金属製になりラケット本体も金属化している。
「部長…俺のラケット伸びるんすけど…」
越前のはハンモックのようにガットがびろーんと伸びた。
「俺のはすだれになってる…」
河村も呆然とラケットを握り込んですだれガットを見つめる。
「ふふふ…」
にんまりするのは乾一人。願ってもいなかった、超合金合体ラケット2号が手に入ってしまったのだから。
「さて、戻ろうか。早速合体ラケット2号の威力を試してみなきゃな。ふはははは」
意気揚々と乾は泉を後にする。
「………」
変わらないのは手塚のラケットだけ。ただじっと自分のラケットを見る。
「部長、これで昼寝していいっすか?」
「…戻るぞ。グラウンド50周だ」
「え~」
「あ~」
渋々と菊丸達は手塚の後について行った。
泉の水はすでに元の静けさをたたえている。
多分、今度ラケットを落としても女神様は出てこない。
多分…。
fin.