青学編
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泉にゆらゆらと沈んでいくラケットを見送りながら、いかにもわざとらしくしゃがみ込むと、越前は膝を抱え込んだ体勢のまま女神を媚びるような上目遣いで見上げた。
「………」
「………」
あからさまなヤラセに手塚と女神の動きが止まる。
「ねぇ…落としちゃったんだけど」
媚びた瞳から生意気へと変貌していく。
バチっと女神と越前の視線がぶつかった。
「………」
女神は手塚から離れると越前のラケットを追い、水底(みなそこ)へとその姿を消した。使命感か職業病か。泉にラケットが落ちたなら我を忘れ追いかける。
「まるで犬ころっすね」
自分で投げ入れておいて越前も言うものだ。
「…だが、そもそも泉にラケットを落とす者はそうはいないだろうに、なぜここで営業しているのだ。しかも押し付けがましいほどの金銀無料贈呈は、後々どのような企みに変化するかわからない。危険だ」
(…営業…)
腕組みをして真面目に考える手塚に童話の夢やロマンを理解させるのは難しいようだ。立ち上がって手塚を見上げた越前は、半ばあきれてしまったが、堅物の手塚ならではかもしれないとも思った。
「あなたが落としたのは、この金のラケットですか? こちらの銀のラケットですか? それとも…」
「違います。俺が落としたのは、引っ張るとガットが広がってハンモックになる『昼寝用ハンモックラケット』っす」
女神の言葉をさえぎり越前は飄々と言う。
「………」
「………」
手塚と女神の目が点と化す。
「あ、いたいたおチビに手塚~…あぁっ、とあぁっ!」
元気よく脇にラケットを抱え、手を振りながら駆けて来た菊丸がこれまたわざとらしくつんのめると
「ホイッ!」
という掛け声と共に泉にラケットを放り投げた。
「へへっ落としちゃった」
頭を掻きながら舌をぺろりと出す。
女神はまたもや投げられたフリスビーを追いかけて走り出した犬のように、泉の中へと潜っていった。
「あなたが落としたのは、この金のラケット…」
「うんにゃ、俺が落としたのは金は金でも、バーベキューが出来る金網ガットの金属製ラケットだよん」
そう女神に申告する菊丸は嬉しそうに見える。
「みんな何やってるんだよ。早く戻らないと竜崎先生が心配する…おっと!」