青学編
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「そこの林を抜けた先に大きな杉の木があるから、そこを右折して森の中へ分け入ることおよそ278メートルと半歩目で思いっきり素振りをしてすっぽ抜かせたラケットが泉に投入されれば見事女神様のご登場だ」
乾の言葉に半信半疑ながら手塚は出掛けてみた。女神云々よりラケット紛失というレギュラーにあるまじき行為に少なからず情けなさを感じたからだ。
しかも紛失理由が女神の泉に落としただと…?
女神湖という湖なら存在するが…。
潜らせてでも捜させるべきか…?
考えながら歩いていた手塚はあやうく泉を通り過ぎるところだった。
「ここか…」
辺りは森の木々に囲まれ、時折吹き抜ける風が葉ずれの音を奏でる。木洩れ日も泉の水を反射させ風が起こすさざ波がキラキラと輝く。想像よりはこじんまりとしていて、清々しい。
「…ああ、素振りをするんだったな」
持って来たラケットを構える。
「ふぅ…」
手塚は吹き渡る涼風の心地よさに、素振りでかいた汗を軽く腕でぬぐうと木立ちの茂る上空を仰いだ。
「…いかん、うっかり素振り練習をしてしまった。すっぽ抜かすんだったな」
片手をあごに添えると、真面目な顔で握るラケットをじっと見る。
「すっぽ抜かすとは…こうか?」
泉のほとりで改めて手塚はラケットを握り直すと、手塚ゾーンのスタンスで思い切り後方から前方へとラケットを流し途中でパッと手を離した。
すっぽ抜くと言うより、一直線に手塚の手から放たれたラケットは反対側の木の幹に勢いよくぶち当たった。そしてその勢いのまま跳ね返ると、くるくる回転しながら泉を越え、手塚の足元に落ちその場で回転速度を落としながら止まった。
「………」
手塚ゾーンで戻るのはボールだけではないようだ。
何だろう。自分がやったことなのに微妙に腹が立つ。
「てぁっ!」
今度はラケットを剣道の竹刀のように握り込むと、頭上に振り上げそのまま一気に振り下ろした。
振り下ろすと同時に手を離したので、勢いのついたラケットは水しぶきを上げ垂直に泉へと突入した。すっぽ抜くと言うよりは叩きつけた感がある。
「ふぅ…」
目的を遂げた手塚はゆるやかに息を吐いた。
ほどなくして泉がごうっと大きくうねりながら渦を巻くと、乾が言ったように一人の輝く女性が現れた。
「………」
さすがの手塚の目も大きく開かれた。