青学編
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「合体ですから二手に分かれてラケットパンチを繰り出します」
女神様は考える。テニスとは何ぞや、と。
「テニスにパンチはないでしょう?」
「必殺技、奥義は時にありだと思います。己の肉体を限界まで鍛え上げ技を繰り出すその瞬間…」
「己を鍛えなくともラケットパンチなら勝手に飛び出すのではありませんか?」
女神様はまた小首をかしげて疑問を口にした。
「超合金の合体ラケットですから、それを扱う肉体も鍛えたいところですよ」
腰に両手を当て、なぜか透けないレンズをキラリとさせると、爽やかなスポーツ少年よろしく乾は豪快に身体を反らして笑った。
超合金ラケットを振るう鍛え上げた肉体…そして二手に分かれて攻撃するラケットパンチ。
女神様は考える。
それはスポーツとは言わないのでは?
「…この件はいったん保留に致しましょう。テニスと言うスポーツに関して私が満足出来る回答が得られた時に、あなたのラケットも戻るでしょう」
そう言うと女神様は3本のラケットを抱えたまま、泉の中へと戻ってしまった。
「しまったな…。一応予備のラケットはあるが…」
乾は女神様の消えた辺りに広がる波紋を見つめ、ゆるくため息をついた。
「どこへ行っていたんだ乾。もう練習は始まっているぞ」
テニスコート脇のフェンスを通り、合宿所へと向かう乾にコートの中から手塚が声をかけた。だが、コートに来ながらラケットも持たずに手ぶらで通り過ぎる乾に、手塚の眉も自然とひそまる。
「ああ、悪いな。ちょっと泉にラケットを落としてしまったんだ。今から予備を取って来るよ」
テニスに不可欠なラケットをなくしてしまったのに、大した問題ではない感じの乾に手塚の眉がさらに寄る。
「泉に落とした…?」
「ああ、世にも美しい女神様のお住まいにな」
乾が両手を広げて説明するポーズはどこかおどけて見える。
「女神だと…? ありえんな。夢でも見たのか、乾」
探るような目だ。当たり前だ。女神など非現実的で架空のものだ。現実ではない。
手塚の目はそう語った。
(だろうな。だが、手塚ならどうするかな)
楽しそうに乾の口元が少し笑った。
「なら、手塚も女神体験してみたらどうだ? 上手くいけば俺の落としたラケットも戻るかもしれない」
「何…?」
乾のラケットが戻る…?では泉に落としたと言うのは本当なのか?
手塚の目に疑惑と好奇心が微妙に混ざる。