青学編
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『女神注意報』
それはテニス部の合宿の時のことだ。
午後の練習が始まるまでのひと時の安らぎを求め、乾貞治は合宿所から少し離れた木立ちの中に静かにたたずむ泉のほとりへと足を運んでいた。
「緑陰の涼しさに樹や草の香り…さすがに気持ちいいな」
高原にある合宿所は、爽やかな気候に恵まれ一日快適に過ごせる好条件ばかりが揃っている。
「と、しまった」
軽く素振りをしながら歩いていた乾の手を離れ、すぐ脇にある泉へとラケットはすっ飛んで行ってしまった。
勢いよく飛び込んだせいかラケットはあえなく泡(あぶく)とともに沈んでしまった。
「…浮いて来るかと思ったんだがな…」
消えて行く波紋を見ながらつぶやく乾に応えるかのように、泉の水が突然洗濯機のごとく渦を巻き始めた。
すると、その渦の中央から輝くばかりのまばゆい光を放つ女神様がなぜか腕に3本のラケットを抱えて現われたのだ。
「あなたが落としたのは、この金のラケットでしょうか? 銀のラケットでしょうか? それともこの何の変哲もないごくごく普通のラケットでしょうか?」
女神様はにこやかに1本ずつラケットの説明をすると乾に微笑みかけた。
「いえ、どれも違います。俺が落としたのは超合金合体ラケット2号です。カスタマイズしている途中で逃げ出したのです」
「………」
心なしか女神様の目が点になる。
「…その合体ラケットとは何をするのですか?」
「テニスです」
爽やかに言い放つ乾の言葉に、日の光が泉の水に反射し柔らかなさざ波の上をきらめかせる。そしてその光の粒が逆光レンズにも映り込んでいくつも輝く。
女神様の瞳にもその輝きが映る。
「テニスならこのごく普通のラケットでも出来ませんか?」
「もちろん可能です」
「………」
女神様は考える。超合金合体ラケットとやらがこの美しく静かな泉に落ちて来たことは未だかつてない。泉のほとりに立ってこちらを見ている背が高く手足のひょろ長い少年は、嘘つきなのか変人なのか。
「普通のラケットでもテニスは出来ます。しかし、超合金合体ラケット2号を振るえば試合は更に面白味を増します」
「テニスとは面白いものなのですか?」
「もちろんです。幾多の駆け引きを経て実力勝負にもつれ込む醍醐味。ゾクゾクしますよ」
実力勝負に合体ラケット…?女神様はいささか首をかしげて考える。
「その合体ラケットは何をするのですか?」