一筆箋
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『花冷え』
「冷えるね」
まだ三分咲きほどの桜の枝を見上げて、不二周助は呟いた。
青学を卒業したばかりの元レギュラーみんなで花見に繰り出したはいいが、雨や寒い日が続いたせいか花の咲き具合は今ひとつだ。
だが、その分花は長く楽しめるとテレビ画面の予報官は告げていた。
「もう一度、満開を見計らって出直すか?」
まだいくつもの蕾がついた桜を見上げている不二の後ろから、乾が話しかけた。
「そうだね、今の時期なら満開まで待てるし」
春休み中ならまだ何度でも…と、肌寒い風に小さく揺れる丸くふくらんだ蕾を瞳に映した後、ゆっくりと視線を乾に向けた。
「新学期初日からテニス部には顔を出すとして、それまで身体をなまらせないようにしなきゃね」
「そうだな、手塚とも話したんだが、竜崎先生の好意で休み中は中等部のコートを使ってもいいそうだ。後輩指導の条件があるが、それは今までと変わらない」
「それはいいね。早速帰りに寄ってみようかな…」
何となく、ボールを打ちたいと不二は思った。
ただ無心に、何も考えず頭も心も空にして、新しい風と入れ替えたいと思った。
まだ蕾は三分咲き。
暖かな陽射しで花開く。
その陽射しに自分もなりたいと思った。
fin.