箱庭~話の花束~Episode1〜
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『遅く起きた朝は』
夏の朝は早い。
夜明けと共に開けっ放しの窓から爽やかな風が入り、カーテンが揺れる。
やがて、まどろみを邪魔するように熱気が登り始める。
「あっちぃ……」
暑さに負け仕方なく布団から身体を起こすと、目をこすりながら枕元の目覚ましを見る。
「……今日って部活あったっけ……」
目をこする手が止まり、徐々に意識も覚醒してくる。
「……」
カレンダーに目がいく。夏休み初日だ。
もう一度目覚ましに目がいく。
時刻は10時44分。
もう一度カレンダーに目がいく。夏休み初日で、自分の書き込みがある。
『部活、9時集合、遅刻厳禁』
暑いのに血の気が引き、背中に冷たい汗が流れた。
「やべっ!」
身支度など後回しな勢いでバッグを掴むと、脱兎のごとく学校へ向かい走り出した。
走りながら、昨日の部長の言葉が頭の中で渦を巻く。
『赤也、明日だけど、初日から遅刻したら……わかってるよね?』
そう伝える幸村の目は楽しげに笑っていた。
何をされるんだ?
強化メニューか?
真田の鉄拳……はいつものことだが……。
立海の正門が見えるまで切原の心は千々に乱れっぱなしだった。
「たるんどる! 歯を食いしばれっ!」
コートに着いたとたん身体が吹っ飛ぶ。
が、これは想定内。痛いが何てことはない。
怖いのは幸村の微笑みだ。
「えっと……幸村部長……」
そっと幸村の顔色を窺いつつ近づけば、
「ああ、ちょっとドリンク作ってくれない? 後、ボール拾って、スコアつけて……」
「あ……はい! いいっス! やりまっス!」
厳しいことを覚悟していた切原も拍子抜けしたが、楽な仕事なので安堵して言われたことをこなした。
だが、コートに入ろうとすると次の仕事を与えられ、切原は結局一日ボールを打つことが出来なかった。
ただ、言われる仕事はどれも簡単なものばかりだった。
「はあ、何だったんスかね、今日の幸村部長。凄いキツいお仕置きを覚悟してたんスよ」
帰り際、愚痴のように切原は柳にこぼした。
「気がつかなかったのか? あれが一番厳しい制裁だったんだが」
もの柔らかく柳は言った。
「え……?」
「レギュラーに練習をさせない」
「あっ……!」
その夜から、切原の枕元の目覚ましは2台に増えたらしい。
fin.