箱庭~話の花束~Episode1〜
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『つぶやき』
「不二先輩、これ」
「え……」
不二周助が部室のドアを開けると、海堂が待ちかねたようにリボンのついた包みを手渡した。
「え……」
もう一度言うと、不二は海堂と包みを戸惑いながら見比べた。
「俺じゃねぇっす、クラスの女子が何だか渡してくれって……」
ぼそりと言うだけ言うと、そのまま不二に背を向け自分のロッカーを開け着替え始めた。
「あ、不二先輩、これ」
「え……」
新たな声に振り返ると、今度は越前が抱えていたいくつかの包みを押しつけて来た。
「ほんと迷惑っす。自分で渡してくれって言いたい」
「え……」
ぶつぶつ言う越前も、あとは不二に目もくれず着替え始めた。
「あ~不二ぃ、プレゼントだよん」
「え……」
その声に振り向いたとたん、大きめな包みが不二めがけて胸に飛び込んで来た。
「ここに来る途中で女の子達から預かったんだよね~」
はい、残りのと言いながら、菊丸の隣で腕いっぱいに可愛くラッピングされたプレゼントを抱えている河村から、まとめて不二に手渡した。
「……」
なぜかどんどん増えるプレゼントの山。
今日は誕生日でもなんでもない。ただの平日だ。
「ああ、不二」
「手塚……」
「預かった」
君までもか、そう思う間もなく手塚は、通りすがりに不二の抱えるプレゼントの上に預かった物を無造作に乗せると、ロッカーに向かった。
「何をしている、早く着替えろ」
「あ、ああ……」
理由のわからないプレゼントで戸惑いを隠せない不二に手塚の声が飛ぶ。
包みを開封したのは練習が終わってからだった。
「何かな~」
嬉しそうに不二の手元を覗き込むのは、不二本人よりも菊丸だ。
「え……」
「クマだ」
包みから現れたのはクマのぬいぐるみだった。
「またクマだ」
クマのストラップだった。
「クマ……」
クマ柄のタオルだった。
「クマ……」
クマの……
クマ……
開けても開けても、出てくるのはクマばかり。
「何で……」
新たに築いたクマの山に、ただ呆然とする不二。
「ふうん。こうなると原因はあれかもしれないね」
「あれって? 乾には何かわかるの?」
データマン乾の登場に、クマにふさがれた道行きに光明を見たと不二は思った。
「昨日の試合で華麗に披露しただろう?」
「え……」
「羆落とし」
「……」
目が点になる。
「シャレっすか」
「くだらねぇ……」
越前の言葉に海堂もひと言吐いた。
「そういえば、女の子達キャーキャー言ってたよね~」
菊丸は山の中からクマのストラップを手に取ると、くるくる回しながら笑った。
騒がれつつ皆が帰ってしまったあと、一人クマと部室に残された不二がつぶやいた。
「クマうぜぇ……」
クマは何も言わない。
ため息だけが流れた。
fin.