箱庭~話の花束~Episode1〜
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『おやすみ』
宿題も終わり、お風呂も上がり、明日の時間割を揃え、そろそろ寝ようかな、と思う頃、少女の携帯は続け様にメールの受信を開始する。
青学のテニス部メンバーは元より、氷帝、立海のおなじみメンバーから一日の報告を兼ねた『おやすみ』メールが届くのだ。
それを見て、届いた順に一通一通返事を送る。
自然と最初のメールと同じ文面になってしまうが、そこは工夫して相手の名前で呼びかけたりする。少しでも同じようにならないように、と知恵を絞る。
大体は一通の返事で終わるが、幾人かは続けて返事をよこす。
その大半が『次の休みはどこかへ出かけないか』といった内容だ。
だが、同じ学校、同じテニス部となれば休みも同じだ。
同時に誘われて、同時に応えるわけにもいかない。
その場合というか、青学以外はどうしても学校単位になってしまうことが多い。
ただ、誘う相手の運がよければ、少女の時間も空いていて、なおかつ誘った相手が自分一人だけの時に当たる。
そうすればラッキーチャンスとなる。が、それが他にバレると当然邪魔が入るわけだ。
いかに秘密裏に行動するかが鍵になるが、ほぼ誰かに嗅ぎつけられ、たちまち尾行集団の人垣が出来てしまう。
「チッ!」
バレたか、と後方から迫り来る不穏な集団に気づいた丸井ブン太は舌打ちした。
「どうしたんですか?」
「こっち」
少女の手を取ると、丸井はさり気なく地下街へと潜る。
奴らが来るならランチタイムでくつろいだ時を狙うだろう。
と、読んだ丸井の気持ちとは裏腹に尾行集団はつかず離れず、ファーストフード店でひと休みしている間も、ついに声をかけて来る者はいなかった。
「あれ……」
いつの間にか後方お邪魔虫集団の姿がない。
いや、だがあいつらのことだ。絶対どこかにいるはずだ、と丸井は絶えず辺りに気を配り続け……。
「つ、疲れたぜ……」
帰宅した途端ベッドへ倒れ込んだ。
ほどなくして丸井の携帯にメールが入る。
≪お疲れ、ブン太。今日は出掛けてたんだろ? 俺達はスポーツ用品店をいくつか回ってたんだ。一緒に行けず残念だったよ。じゃ、明日の朝練は遅刻するなよ。おやすみ≫
部長の幸村からだった。
偶然なのか、わざとなのか、頭の中でグルグルと思考は巡る。
ともかく、ぬけがけはひどく疲れるものだ、と実感した日でもあった。
そして、丸井は少女にメールを送る。
お礼と一緒に『おやすみ』と。
少女からも返事が返る。
『おやすみなさい』
fin.