箱庭~話の花束~Episode1〜
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『降水確率』
朝の天気予報では午後からの降水確率は80%だった。
「あくまでも予報やしな」
「まあな、時間通りピッタリ降り出す方がどうかしている」
氷帝テニス部の朝練開始時刻に、どんよりとした空を見上げ忍足と跡部が話しながらコートへ向かっていた。
「何の話~?」
あくび混じりに二人の後から芥川がやって来た。
「降水確率の話や」
朝練に芥川が参加して来たので珍しいな、と忍足は思いながら言った。
「こう……すい、確……率……」
まだ眠いらしく、かなりぼんやりとしながら忍足の言葉を繰り返した。
「大丈夫か、ジローの奴」
軽く睨むように跡部は芥川を見たが、あきらめと呆れが半々だ。
「眠りながらでも出て来とるんやから、大丈夫やろ」
忍足は笑顔半分だ。
「それって、榊監督の確率だよね~」
「ああ?」
「何がや?」
いきなりな芥川の発言に、跡部と忍足の足も止まる。
「確かに監督のあれは気になるC~、予報が出来ればよけられるからE~よね」
「ああ?」
「せやから何やの、ジロー」
何の事か見当もつかず、眉を寄せる忍足に顔をしかめる跡部。
「え~、忍足が自分で言ってたのに~」
「え……」
思い返しても雨の話しかしていない。
「けど、降水確率のことしか言うてへんよ?」
「だから~香水確率だC~」
「ああ?」
「はあ?」
一瞬、跡部と忍足の目が点になったが、すぐにそれは笑い声に変わった。
「そんなんがあったら……」
「笑えるぜ」
「何がおかしいのかね」
「う……」
「げっ……」
いつの間にか、跡部と忍足の後ろには当の監督、榊太郎が立っていた。
二人の視線が電光石火のごとくぶつかり、言い出しっぺの芥川を探したが、本人はすでにベンチで寝ている有様だった。
「勝つんは氷帝、ちゅう話ですわ。関東を制して全国も制覇するんは氷帝やから」
咄嗟に作り笑顔で、忍足が受けのよさそうな答えを言った。
「ほう、意欲的だな。それならば行ってよし」
得意のスタイルに見送られ、二人はコートへと駆け足で向かった。
「……香水確率も80%やね」
「そんなところだな」
もう一度、見合って笑った。
fin.