箱庭~話の花束~Episode1〜
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『入学式』
開花予想が思ったよりも早く、入学式まで桜が保つだろうかと危惧していたが、開花後の気温が思ったよりも上がらず、花は長く咲いてくれた。
「これなら満開で迎えられそうだな…」
青春学園の生徒会長、手塚国光は窓辺の桜に目を細めながら、生徒会室で新入生を迎える言葉の原稿を確認していた。
「いよいよ明日だね、不二」
「そうだね。僕らもいよいよ三年だよ、英二」
体育館前に『入学式式場』の立て看板を二人で立てると、正門脇に並ぶ桜に見入った。
「どんな子達が入って来るのかな」
「テニス部にたくさん来てくれるといいな~」
そんなことを話しながら、二人で次の仕事にかかるべく、また体育館内に入って行った。
翌日の入学式は快晴だった。午前中は在校生の始業式で、午後からが入学式だ。
一時半からの開始だが、正午の鐘が鳴ったあたりからちらほらと父兄に付き添われ、大きめの制服に身を包んだ新入生達が正門をくぐり始めた。
「ふふ、定番だね」
正門には『青春学園中等部入学式』と筆書きされた看板がある。新入生はその横に立ち、照れくさそうに記念写真に収まっていく。
「俺もあそこで撮って貰ったよん。あ、おめでとう。これつけてね」
菊丸は写真を撮り終わって、正門を入った男子生徒に『入学おめでとう』と書かれたリボンのついたピンク色の造花を胸元につけた。
「受け付けはあちらです。先にこれをご覧になって、自分のクラスを確認して下さい」
不二は、新入生がクラス分けされた名簿のプリントを軽やかに生徒と歩く父兄に渡していく。
「新入生はクラスがわかりましたら教室へ行って下さい。ご父兄は体育館へどうぞ」
澱みなく案内をしていく。
「お前何組だって?」
「2組。じゃ、俺教室行ってくるから」
小柄な少年が名簿から自分の名前を見つけると、他の新入生同様、上級生の先導で一年の教室へと足を向けた。
少年が不二と菊丸の前を通り過ぎた。
「何だか目立つ子…だね」
不二が少年を目で追いかけていったが
「うん、目立つね。可愛いじゃん」
「え…」
可愛いはちょっと違うんじゃ、と菊丸の声にそちらを向いた。
「……」
いたのは少年ではなく女の子だった。それも先ほどの少年と背格好も似たような感じだ。
少女も父兄と別れると教室へ向かっていった。
「今の子一番可愛いかも」
こそっと菊丸が不二に囁き、ウィンクした。
「ふふ」
不二も微笑んだ。
「新入生が入場します。拍手をお願いします」
エルガーの威風堂々が流れると、拍手と共に新入生が1組から順番に入場して来た。
「あ、さっきのあの子だ」
菊丸が小声で不二の脇を肘で小突いた。
少し緊張した面持ちで少女は曲に合わせて歩く。
「あ…」
先ほどの少年も続いて視界に入った。不二は少年も目で追った。なぜだか気になる存在だ。
新入生が全員席に着くと曲も止まった。
不二や菊丸達は在校生代表で青春学園校歌を歌い、新入生を歓迎した。
新入生代表は、男子と女子の名前が一人ずつ呼ばれて席から立ち上がった。
「さっきの二人だ…」
不二と菊丸も吸い寄せられるように二人を見つめた。
その新入生は、マイクの前に立つと壇上の校長へ向けて一枚の紙を二人で持ち、半分ずつ文章を読んだ。
「新入生代表、越前リョーマ」
少年が目を上げて、まっすぐに名前を言った。
少女も越前に続いて名乗った。
二人が席に戻ると今度は手塚が現われ、生徒会長として歓迎の言葉を述べた。
「ふふ、楽しみが出来たかも」
式後のクラス写真の撮影で、待機する新入生を眺めながら不二が言った。
青空に桜がまぶしいほどに映えて、ひらひらと花びらが舞い降りた。
fin.