いつもの青学ヒロインの他に、他校関連のヒロイン全てをまとめて『他校ヒロイン』として登場します。
その他・青学他校混合編〜Episode1〜
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「手塚、行こう」
先ほど幸村に投げ飛ばされた男が無言で走り去った後、残りの連中も慌てて逃げ、空き地には不二と手塚、幸村と真田の四人が残るだけだった。
「ああ」
短くうなずくと、手塚は真田と幸村の二人に目礼し、不二と並んで空き地を後にした。
「大丈夫か、精市」
「何が?」
「その…ひと暴れをしてだ」
残った真田と幸村も、ゆっくりと空き地から離れ始めた。
「大丈夫だよ。気分はいいし、例え疲れが出たとしてもひと晩休めば平気だから」
穏やかに幸村は答えた。
その表情に真田も安堵を覚え、また明日からの練習に向け気合いを込めた。
「これで、余計なことに煩わされずに関東を目指せる」
「そうだね。あ…いつの間にか月が出ている、気がつかなかったな」
空を差すしなやかな指の先に、雲間から覗き始めた三日月が煌々と輝いた。
「さて、乾もお疲れ様。いつからいたの?」
空き地から出てすぐの人通りのない交差点で、不二がシャッターの降りた店の前の自販機に声をかけた。
「何だ、わかっていたのか。さすがに不二だな」
自販機の陰からノートをとじると乾が現われた。
「…乾」
手塚がいたのか…という、やや驚いたような、だが手塚だから傍目には無表情に見える顔でつぶやいた。
「実に有意義なデータだ」
暗がりからその長身を現した乾は、手塚と不二を先導するように歩き出した。
「乾には何が見えたの?」
「ノーブレス・オブリージュだ」
「…え?」
「フランス語だよ。noblesse oblige。身分の高い人にはそれに伴って大きな義務がある、とする考え方だ」
意味がわからず、首をかしげた不二に乾は答えた。
「…つまり、今日三校の部長が集まって悪漢退治をしたのは、当然の義務になるってことかな?」
「俺にはそう思えた」
それぞれの部長は、誰の命令や願いではなく自校あるいは他校のために、自ら立ち上がった。
「ふふ、みんなカッコよすぎだよ」
不二が笑った。
月明りの下、それぞれの部長はそれぞれの想いを胸に、長い影と共に歩む。
誰のためでもなく、ただ前へと。
fin.