「何を話しているのか、もっと近くに行って聞きましょうよ、先輩」
「あ、おい赤也！」
丸井が止めかけた時には、もう切原は真田達のテーブル近くに移動していた。
「ちっ！ 何だよ、あの素早さは…」
舌打ちをしながらも丸井も床に置いてあるバッグを掴むと切原に続いた。

切原と丸井は、真田と七星が斜め横から見える位置のテーブルを陣取った。さっきの席よりかはずっと近くなり、やっと二人の会話も耳に入るようになった。

「…出来たか…」
「はい。出来てます」
「…やったな…」
「真田さん、頑張ったから…」

二人の…と言うか真田のいつにない照れたような嬉しそうな声が切原と丸井に届いた。
「…出来た…って？」
「…やったって…？」

「お祝いしましょうか」
「お…大袈裟だな。…これくらい…もっと精進せねば」

さらに照れる真田に、顔を見合わせる丸井と切原。

「…出来たって、真田副部長に何が出来たんすか…ね…しかも祝うほどの…」
「そりゃ…口に出して言えねぇような…モノが…」

なぜか口ごもり、下を向いてしまう二人。

「あたしは、もっとしても大丈夫です」