「…丸井先輩、あれ…もしかしなくても真田副部長じゃないっすか？」
「え…」
立海大からはかなり離れ、にぎやかな駅周辺に比べ静かな喫茶店の中、入って来た客に思わず首をすくめる切原赤也。
「げっ！ もう部活終わっちまったのかよ。早過ぎじゃね？」
切原に言われ、あわてて自分の腕時計と見比べこれまた焦る丸井ブン太。
「っすよね～」
「やっべぇな…。見つかったら部活サボってケーキ食いに来たのがバレちまう。いいか赤也、ぜってー真田が帰るまで見つかるんじゃねぇぜ？」
「ラジャっす！」
二人揃って頭を下げる。テーブル上で匍匐(ほふく)前進するかのようにへばりつく。これなら店の中の観葉植物と柱も手伝い、かなり真田からは見えにくいはずだ。

だが、当の真田は目前の相手に注意のすべてを向けている様子で、サボった二人に気が行くことはまずなさそうな雰囲気だ。

「………」
「………」
「俺達いつまでこうしてればいいんすかね？」
テーブルにへばりついたまま会話を続ける二人に、側を通り過ぎるウェイトレスも不審げに見下ろす。

「なぁ…大体真田が一人で喫茶店に来るって変だと思わねぇ？」