『秘密の時間』


「最近の弦一郎は、つき合いが悪いと思わないか？」
「そう？弦一郎のつき合いの悪さは今に始まったことじゃないだろう？」

ある日の部活中。柳は何気なく副部長である真田の様子をそれとなく部長幸村に言った。

「いえ、それがそうでもないんですよ。現に今だって…」
二人の会話を聞くとはなしに耳に入れた柳生が話を始めたとたん、噂の張本人真田弦一郎が足取りも軽くそのメンバー達の横をスタスタと通り抜けた。しかし、不意に振り返るとひと言だけ告げた。
「すまんが、今日はこれにて帰宅させて貰う。用事があるんで失礼する」
いつになくキリッとした表情だ。
「ああ、わかった。明日の朝練は来るんだろう？」
幸村は確認を取るように、真田に聞いた。
「それはもちろんだ。朝なら支障はない」
（朝なら？）
（放課後はまずいってことか？）
真田の言葉に反応したメンバーは、部室に戻る真田の背中を視線が突き刺さるほど一斉に凝視した。



「待ったか？」
「いえ、10分ほど前に来たばかりです」
「そうか。だが、わざわざすまんな。俺のために」
「いいですよ。あたしも楽しいですから」