「え！ 大漁？ 見せて見～せて」
子供のように猛ダッシュで菊丸が駆け寄ると、大きな目をさらに丸くさせ驚嘆の声を上げた。
「うわっ！ おチビ、丸焼き天国だよっ！」

「ほんとっすか？」
菊丸の驚きに勢い越前も駆けつけ、すぐさま網の袋ごと抱えて舞い戻った。

「河村先輩、忍足さん、すぐに串刺しお願いしまっす」
「よっしゃあ。任せろよ」
忍足が猛然と魚のウロコをはがし、河村が塩を振り次々と串に刺す。

そして残った連中が、火の周りに串を立てていく。


「なぁ、手塚。俺らは何なんだ…？」
キャンプファイヤーかバーベキューか。跡部の目には楽しむ仲間達の姿が虚ろに映る。
「……釣り人だ」
手塚は河原の連中を見据えて答える。だが、表情からは何も読み取れない。

「……そうか」
「…そうだ」

手塚は一歩、仲間達へと踏み出すと肩越しに跡部を振り返った。

「釣りはロマンだ。今日はお前と存分に手合わせ出来て満足だ。後は連中に分けてやろう」
レンズ越しの手塚の目が笑った。

「ロマンか…程遠いぜ、手塚よ。だが、案外似合いかもな」

ふっと目を閉じ、小さく唇で笑うと跡部も手塚の後から仲間達の声が集う河原へと踏み出した。


fin.