そう言いながら越前が運んで来たバケツの中には、先ほどから手塚によって釣り上げられた何匹かの魚が泳いでいる。

「出来るけど寒バヤは小型だからね。みんなで食べるには数がいるかな」
包丁とまな板の用意をしながら陽気に河村は言った。

「そやな、人数でワイワイ食べるんやし、ここはやっぱ鍋やろ」
「鍋、いいっすね～」
寒風の中にさらされる身体は冷えるばかりだ。熱い物が自然と食べたくなる。
改めてバケツを覗き込む越前。喉も鳴る。そんな様子に忍足も笑いながら、大きな鍋を取りに車へ向かった。

「あ、忍足。ついでに野菜も出してくれるかな」
「OKや」
車へと向かう忍足の背中に河村が声をかけ、忍足も軽やかに手を振り答える。



「何だか鍋になるみたいだよ。楽しみだね」
河原に置かれたバケツと並んで座っている幸村が、跡部に楽しげに言った。

「鍋か…」
跡部が少し考える仕草をすると、何か思いついたらしく川から釣り糸を引き上げ下流にいる手塚に声をかけた。

「おい、手塚。魚も一種類じゃ芸がねぇ。フライに変えねぇか？」