「となると、親が子供の学力を決めてしまうのか？ 」
「ある意味そういうことになる」
「…くく、それで勉強しろと言われたらかなわないだろうな」
おかしそうに乾が笑うと柳が続けて口を開いた。

「現在の女子大生が『子供の将来を踏まえた上でつけたい赤ちゃんの名前』というランクがあるが…女の子の１位が姫梨(ひめり)２位が妃(きさき)３位が華恋(かれん)４位が沙蘭(さら)５位が姫(ひめ)６位が妃菜(きな)７位が玲莉(れいり)８位が梨菜(りんな)９位が愛音(あいね)と来て、10位が天使(えんじぇる)だ」
立て板に水で、一気にスラスラと柳はデータを披露してくれた。

「…え、天使だと？ …中高年になったら恥ずかしくないか？ 」
「おそらく恥ずかしくて名乗れないだろうな」
ふと乾は『乾天使』と言うわが子を想像してみた…が無理だった。まず字面からして恥ずかしいではないか。

「せいぜい小学校低学年までの名前だろう」
柳もチラリと『柳天使』を考えてみたがすぐさま払拭した。

「何にせよ、一目で読める名前が無難だな」
そう言いつつも、頭の中ではあの少女の名前を自分の名字の下に当てはめる…。

（いいじゃないか、可愛いし）

乾も柳もそう思った。無表情に、探るように、したたかに…。

fin.