すぐ次のお盆も運ばれ、４人の前にはそれぞれのラーメンが並んだ。

「柳生、割り箸だ」
乾が側にある箸立てから割り箸を取り、柳生に渡す。

「あ、ありがとうございます。乾くん」

「あ～眼鏡が曇るわ…」
柳生が割り箸を割った時にはもう忍足が最初のひと口をすすっていた。

「曇り止めを使わないのか？ 」
「…伊達眼鏡なんだから、はずして食べればいいんじゃないか？ 」
手塚と乾がそれぞれ割り箸に麺をからめながら言った。

「そやねんけど、曇るんもまぁ、眼鏡のご愛敬やね」
香り立つ湯気から顔を逸らし、眼鏡もややずらし、曇った部分を解消させようとしながら忍足が答える。

（慣れてしまえば大したことはないですしね…）
柳生も思ったが、ただ黙々と麺が見えないほど乗せられた野菜を口に運んだ。



「はぁー、食った食った。結構旨かったやん」
店を出ながら腹をさすり、満足したように忍足が言った。

「ああ、なかなかだったな。冬に向けて乾汁のラーメンスープバージョンでも試作してみるかな」
「…よせ。ラーメンスープはラーメンと共にあるから旨いのだ」

「では、うどんスープならどうだ」
「却下だ」