『曇りのち眼鏡's＋１』


「…時に思うのですが、なぜ私は眼鏡'sに入れなかったのでしょうか？ 」

と、ある日某所にて、立海大附属中の柳生比呂士が誰にともなくつぶやいた。

「そやな…」
椅子に腰かけ腕を組み、何とはなしに壁にかかったメニューを見る氷帝学園の忍足侑士が、それに対し生返事をする。

「そうだな…俺が思うに声質の問題じゃないか？ 」
コップの中の氷が徐々に溶け出していく様を、つぶさに観察しながら青春学園の乾貞治が答えた。

「俺もそうではないかな…と思うがあくまで推測の域に過ぎん」
同じく青春学園の手塚国光が、開いた文庫本から目を上げチラリと柳生に視線を向けると同意して答えた。

「…やはり、そうでしょうか…」
ふぅ…と小さくため息をつくと、パタンと眺めていたメニューを閉じて柳生も答えた。

「決まりました。私は野菜たっぷりタンメンにします」

「ほい、柳生はタンメンな。おねーさん、決まったで」
柳生の声を聞き、忍足が手を上げ中華そば屋の従業員を呼んだ。

柳生は、注文表を手にやって来た従業員に、４人分のオーダーをする忍足の声をじっと静かに聞いていた。