熱戦がどのコートでも繰り広げられる中、ふと手塚を見た乾は、また視線がフェンスに向けられているのを見た。

（それほど気になるものか…？ ）
さすがに乾も不可解に思い始めた。
手塚ともあろう男が、たかがライバルが来ていると言うだけで浮き足立つものだろうか…？

今ひとつ手塚の気持ちが推し量れないまま、乾も再び手塚の視線を追った。

（…ん？ ）
氷帝の三人から向日が一人離れた。
（…んぬ？ ）
その向日を視線が追う。
（……向日だと？ ）

何かの用事なのか、向日の姿が視界から消えると、何事もなかったように手塚の視線が戻り、試合のコートに向けられる。

（…やはり向日なのか？ なぜだ？ 向日と手塚では何も接点がないではないか！ ）

悩む乾。謎は好奇心を生む。

「どうしたんだ、貞治」

いつの間に来たのか立海のデータマンこと柳蓮二が、自分の幼馴染みである乾に近づくと声をかけて来た。