いつもの青学ヒロインの他に、立海ヒロインと立海関連のヒロインが『立海ヒロイン』として登場します。
立海編
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「ねぇ、聞いてもいい?」
私は遠慮がちに、横顔に声をかけた。
「何を?」
横顔はこちらを向いた。目が綺麗だな、と思った。
「いつからここでテニスを見てるの?」
「そうだね……戦後すぐ、かな」
「戦……後?」
つぶやかれた言葉に目が点になった。
「80年以上も……!」
「80年……? そうか、もうそんなになるのか……」
一瞬見開かれた眼差しは、また寂しげな色を浮かべてまばたきの中に消えた。
「僕はね、この立海大の生徒だったんだ。そしてもちろんテニス部にいた。当時は庭球部だったけど……」
その人の視線はコートにあるけれど、遥か遠くを見ているようだった。
「そして戦争が始まり、とてもテニスなんて出来る環境じゃなくなり、友達も先生も、仲間も、紙切れ一枚で戦場へ駆り出されて行って……誰も帰って来なかった……」
「そしてついに、僕にも順番が来た。……乗ったよ、飛行機に。片道の燃料だけ積んで、敵の空母に……」
「やめて! もういいから……もう……!」
とめどなく涙があふれた。
その人も肩が震えてる。
「テニスをしたかったんだ……僕はただ、テニスを続けたかった……」
明るい歓声とボールの音が、いつになくまぶしく聞こえた。
「やる! やるよ、私! 大先輩のお願いだもん、聞いちゃうから!」
思い切り涙を拭いて笑顔を作った。
「え、でも……」
「いいの! 筋肉痛なんて、なんでもない! さあ、テニスしよう!」
私は今、生きているんだから。
いきなりやる気満々な豹変ぶりに驚いたのか、その人は幾度か目をしばたいたけれど、優しく笑ってくれた。