いつもの青学ヒロインの他に、立海ヒロインと立海関連のヒロインが『立海ヒロイン』として登場します。
立海編
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「……精市が俺を見て微笑んだ瞬間、俺に掴みかからんばかりに迫っていた影が、一瞬で消えた。夢はそこで終わった」
「ふふ、そんなことがあったのか」
その帰りに入院中の部長、幸村の見舞いに訪れた面々は、幸村の穏やかな微笑みと声に心底、安らぎと癒しを貰えたと思った。
「そういえば、俺も嫌な夢を見て明け方に目が覚めたな」
つぶやくように幸村が言った。
「どんな夢っすか?」
遠慮がちながらも、好奇心にあふれた眼差しで切原は尋ねた。
「俺は暗い部屋にずっと一人でいた……」
思い返すように幸村は言葉を選んで話し始めた。
「誰もいなくて、部屋なのにやたら広くて、歩いても歩いても誰もいなくて、寂しくてやりきれなくてへたり込んで泣きそうになってた」
ゆっくりと見舞いに来たメンバーを見回すと、静かに言った。
「でも、そこへ皆が来てくれたんだ。ドアを開けて光とともに……」
少しだけ陰ってしまった微笑みが徐々に輝く笑顔へと変わっていった。
「それはよかった」
「ああ」
「まったくだ」
「へへ」
口々にメンバーも言葉に笑顔を乗せた。
やはり立海には幸村精市という要な部長がいてくれてこそ、という思いがひとつになりあふれた。
「では幸村くん、またお邪魔に伺います」
「次はケーキ持って来るぜ」
部員がひと言ずつ声をかけて部屋を出ていく中、最後に柳が言った。
「精市、会えてよかった。あの追いまくられる恐怖の中で、最後に精市の笑顔に会えて、どれだけお前に支えられているか改めてわかったよ。ありがとう」
一瞬驚いたように目を見開いた幸村は
「ふふ、それは俺もだよ、蓮二。暗闇に押し潰されそうだった俺に光をくれた。暖かい光を……だから、俺からもありがとう」
柳に手を差し出した。
「精市」
柳は力強くその手を握った。もう一度、一丸となって全国へ。
その思いを胸に、それぞれ病院を後にした。
「あら幸村くん。顔色が随分よくなったわね」
点滴の交換に来た看護師は、幸村の様子に笑いかけた。
「はい、部活の皆が来てくれましたから」
幸村も、ここ数日重くてだるかった身体が、いつになく軽くなった感じに見舞いに来てくれたメンバーに感謝した。
今夜はもう、一人ぼっちの夢から解放されるだろう…。
「俺には仲間がいる……」
ベッド脇のサイドテーブルに飾られている、去年全国制覇した時の集合写真。
その中の強い眼差しそのままの視線を、両手に注いでぐっと握り込んだ。
「必ず勝つ」
つぶやきは決意となり、暑い夏へと心は動く。
もう一度全国へ。
fin.