いつもの青学ヒロインの他に、立海ヒロインと立海関連のヒロインが『立海ヒロイン』として登場します。
立海編
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ドアに手をかけた時、真後ろに気配を感じた。
奥へ行ったはずの黒い影が今、自分の後ろにいる……。
柳生の全身が総毛立った。
その影の手が確かに自分の首筋に触れたと感じた時、柳生はしゃがみ込んでいた身体を起こすのと同時にドアを開け放ち、脱兎のごとく床を蹴り駆けだした。
「わ……あっ……」
カラカラに乾いて喉にへばりついていた声がやっと出た。
走った。ひたすら走った。
人のいる方へ。誰もいない校庭、誰もいない廊下、教室。目の端に通り過ぎる風景に、黒い影が平行して追いかけてくる。ギョッとする。外へ出てしまおうと思ったのに、門側へ行く先に走り込まれてしまう。
(もしかすると……)
高等部なら人がいるかもしれない、柳生は方向を変えると一気に廊下から階段を駆け上がった。立海の中等部と高等部は敷地を隔ててはいるが、渡り廊下一本でつながっていて、それぞれの施設を共用しているのだ。
あの渡り廊下を渡れば……。目の前に空中廊下と呼ばれる長い廊下が見えた時、安堵と共に驚愕で足が止まった。
廊下の向こう側に黒い影が一体。
そして自分を追いかける足音が、後ろから来て止まった。
荒い息を肩でしながら、柳生は、目の先の黒い影と、後ろにいる黒い影に挟まれて立ちつくした。
今さら誰もいない中等部には戻れない。
それなら、前にいる影をかわして高等部へ進むのみ。
柳生がそう答えを出した時には、すでに勢いよく駆け出していた。
影はニヤリと笑った。
表情も何もない、闇色の影が確かに柳生の前と後ろで笑った。
(くっ……)
柳生が渡り廊下の真ん中部分まで走った時、いきなり足元が真っ黒く口を開けると柳生はまっさかさまに落ちて行った。
「わあっ……」
何かに掴まろうと必死に伸ばした手は固い物の上に乗った。
「……!」
ハッと目が覚め身体を跳ね起こす。まだ息が荒い。
汗もビッショリとかいている。
その時、軽い電子音が鳴り響いた。
まばたきをして辺りを見回す。見慣れた自分の部屋の天井とカーテン越しの陽射しに鳥の声。伸ばした手は目覚ましの上にあった。
いつもの起床時間だ。
「夢……」
柳生はようやく息を整えると眼鏡をかけた。
「何て夢でしょうか……」
ため息混じりにつぶやくと、額の汗をぬぐった。