いつもの青学ヒロインの他に、立海ヒロインと立海関連のヒロインが『立海ヒロイン』として登場します。
立海編
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『そして誰もいなくなった』
私も小学生の頃には『探偵』なんてものにも憧れましたね。
ええ、推理小説、いわゆるミステリーが好きで随分読んだものです。それこそ学校の図書室のを読破してしまったら、図書館まで足を運びました。
定番の明智小五郎に少年探偵団。私はルパンよりはホームズ派でしたね。
そしてクリスティ。名作が多いですね。
『そして誰もいなくなった』など……。
「おや」
ふと気づけば、図書室にいた柳生比呂士の周りには誰もいなくなっていた。
時計を確認する。
「まだ昼休みは終了していませんが……」
読みさしの本を棚に戻すと、改めて室内を見渡した。
先ほどまでいたはずの図書委員はおろか、校庭から聞こえていたはずの喧騒さえ消えてしまっている。
「……」
いわれのない不安感が柳生の全身を取り巻く。
「いませんね……」
教室へ急いで駆け戻った柳生の目は、ここへ来るまで通り過ぎたどの教室も空っぽだったことを見て来ている。
例え自分のクラスが移動教室であったことをうっかり忘れていたにせよ、どの学年のどのクラスも移動教室なはずがない。
ましてや職員室も空だなんて。
「一体何が……」
冷静沈着を誇る柳生も、この広い立海の校内にたった一人取り残されたのかという疑心暗鬼に心がざわついた。
ひとつひとつの教室、体育館、そしてテニスコートから部室まで覗いたが、人っ子一人いなかった。
詐欺師の相方さえも見当たらない。心細いとはこのことだ。
「私にこんな脆い感情があったなんて……」
ぽつりとつぶやいた。
誰もいない部室に一人たたずみ、ギュッと手を握り込んだ。
浮かぶのは部活の風景だ。コートに跳ね返るボールの音、向かい側にいる丸井とジャッカル組、隣りにいるのは相方の仁王。
真田に怒鳴られる切原に、静かにコートを見つめる柳に幸村……。その誰もがいない。
孤独に押し潰されそうになる。
「いないのですか……?」
やっと絞り出した声は小さくて、そのまま空間に吸い込まれるように消えた。
「誰か……」
部室をぐるりと見回す。その誰かを探すために、目が必死に泳ぐ。意味もなくロッカーを次々と開けていく。
まるで、隠れんぼしている相手がそこにいやしないかというように。
だが、柳生の期待とは裏腹に扉の中は暗闇が入っているだけだった。
そしてどのロッカーの名札にも記名すらなく、あるのはたったひとつ『柳生』だけだ。