「柳、それを言ったら夢見る乙女が可哀想だよ」

ずっと部誌を書いていた、幸村先輩が、顔を上げて言ってくれた。

（わぁ…幸村先輩優しい…）

「有紀ちゃん、幸村有紀ではどう？」
幸村先輩が優しくあたしに微笑みかけてくれた。

「いい！凄くいいです！幸村有紀！なります！」
あたしは手を垂直に挙げた。

パチンッ！
「ゲホッ！グハッ…」

またブンちゃんがむせ返った。

「幸村てめっ…！人の彼女に手ぇ出すんじゃねぇぞ」

「ふふ…人から奪い取るから楽しいんだよ。それに俺は来る者拒まずだしね」
怒るブンちゃんに、にっこり笑う幸村先輩。

「うっわっ！幸村くん性格悪すぎ！」

「もぉ、ブンちゃん、幸村先輩優しいでしょー。略奪愛！なんてロマンよ、ロマン～！」
「…有紀？」

ブンちゃん、ちょっと目が点。

「幸村先輩、来る者拒まずなら『去る者』は？」
あたしはわくわくして聞いた。

「殴り倒して…踏む」
にっこりと言う幸村先輩。

「あたし、幸村先輩なら踏まれたいかも！です」

「有紀―!?」