幸村の顔が強張る。

しかし、ここは部長としての威厳を見せないと、生意気だが可愛い部員の悩みなんだ。笑ってはいけない。

「何ぼーっとしてんだ、赤也。次、お前の番だぜ」
汗を拭きながら丸井がベンチに腰を下ろすと、ゴクゴクと喉を鳴らしてドリンクを飲み始めた。

「何で俺ってワカメなんスかね」
同じ疑問を丸井にもつぶやいた。

「髪の毛がワカメに見えるからだろ？ 」
何の悪びれもなく、チラリと切原を見ただけで、丸井が答える。

「じゃあ、俺の髪がまっすぐだったら、どうスか？ 」
自分のウェーブのかかった髪をつまむと…
「カッパ」
速攻で返事が返って来た。
「……」
目が点になる切原。

（プッ…クク…）
やめてくれ、ブン太。無表情で笑いをこらえるのは苦しいんだ。

こっそり腹筋を揺らす幸村。

「ワカメでいいっス…」
ラケットを握ると、切原はベンチから立ち上がった。形相は般若に近い。

「ギャーッ！！ 」

赤目モードの切原にジャッカルが潰されたようだ。

『赤目の狼』
なんて呼び名なもあったような─


fin.