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氷帝編〜Episode1〜*
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ただ、それが跡部の言うようなものかは判断に迷うところだ。
「けど、跡部がこないなタイプの子とメールするなんて珍しいやん」
「クラス委員の奴だ。伝達事項がどうので番号とアドレスを、いつの間にか登録されてた」
ため息混じりに言うと、返事らしきものをさっと打ち込み
「これでしまいだ。後は知らねぇ」
と携帯をしまいかけたが、案の定、また速攻で返事が来た。
(20秒やね)
忍足も感心する。
「何やったら、俺が代わりに返事したろか?」
冗談半分で、表情が険しくなる跡部に忍足は言った。
しかし、跡部は忍足に無造作なまでに携帯を投げて寄こした。
(あれま…)
焦って受け取った携帯の画面を開くと
《跡部様、全然読めません》
とあり、文末に泣いている顔文字があった。
(読めへん…? 跡部は一体どないな文を送ったんやろ…)
好奇心に負けて、忍足はそっと送信履歴を覗いた。
απροΓ νδπμλλ Ξψθτ σ⊂αΩοΛωε
とある。
(はい?)
《跡部様、全然読めません》
(俺も読めへんがな)
「跡部…文字化け…ともちゃうみたいやけど…」
呆気に取られた顔で、忍足は跡部に白旗を振った。
「あーん?」
忍足を振り返った跡部は
「腹が減っているならちゃんと飯を食え、と打ったんだよ。ギリシャ語で」
「はい?」
ギリシャ語?と、目が点になった忍足は画面と跡部を交互に見た。
「携帯だから略語だけどな」
「いや、せやから、なしてギリシャ語になるん?」
「これ見りゃ、相手がギリシャ語発展途上だと誰だって思うだろ?」
跡部はそう言うと忍足の手から自分の携帯を取り、クラス委員からのメールを最初から出して見せた。
(…顔文字…)
やっとわかった、と忍足は合点がいった。
いくつもの顔文字の並ぶメールの文字。それはギリシャ語のアルファベット、もしくはロシア語のアルファベットから成り立っている。
(俺らには記号としてしか映らへんけど、ギリシャ語のわかる人間からしたら、文章はおろか、単語にすらならへん文字の羅列に見えるんやろな…)
跡部は帰国子女だ。
つい最近、三月までイギリスにいた。
そして、氷帝の一年生として忍足達と入学式を終えたばかりだ。
日本では当たり前と思われている携帯メールの顔文字も、跡部には奇妙に見えることかもしれない。
そう忍足は判断した。