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氷帝編〜Episode1〜*
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「なぜ」
「修学旅行は団体やから」
「…行かねぇ…」
「はら~勿体ないわ」
「ああ? 何がだよ」
のらりくらりとした忍足の会話に、跡部は業を煮やしたようにいささか強く終止符を打った。
「日光言うたら徳川の埋蔵金や」
「ああ?」
話が見えない。
お好み焼き屋の前で、跡部は忍足を振り返った。
「修学旅行じゃねぇのかよ?」
「埋蔵金はオプションや。修学旅行にイベントはつきもんやろ?」
今度はニンマリと忍足の目も笑った。いかにも曲者的な笑顔だ。
「けっ!…勝手にしろ」
それでも跡部は行くとは言わず、お好み焼き屋の引き戸を勢いよく開けた。
「遅ぇぞ!」
すでに先に着いて注文を出していた部員達は、食べ始めるところのようだ。店中に焼きたての湯気が香る。
「こちらでよろしいでしょうか?」
席の都合で、跡部と忍足は二人用のテーブルに案内された。
「で、埋蔵金やけど」
「何でまたそっちへ行く!」
まだ話すつもりかと、呆れて跡部は見ていたメニューから顔を上げた。眉がまたひそまった。
「ほな、日光合宿な」
「…合宿か…」
合宿ならまぁ…と思った矢先
「合宿先は日光やで」
「あぐ、ひっほう?(日光?)」
「いつだよ」
二人掛けテーブルから忍足が、身を乗り出すようにして他のテーブルの連中に声をかけた。部員も熱々のお好み焼きをくわえて振り返る。
「何で日光なんだ?」
「日光って猿だろ?」
「合宿ってイメージじゃないC~」
「まあ、ええやん。跡部の希望や」
「言ってねぇ!」
何なんだ、と忍足を睨みつけるが店員がお好み焼きの準備を自分達のテーブルで始めてしまったので、そのまま話題が途切れてしまった。
そして忍足の『ま、ええやん』のセリフに押された形のまま、修学旅行という名のついた氷帝学園テニス部の合宿が、爽やかな新緑の萌え出(い)ずる中ゴールデンウィークに行われたと言う。
「東照宮のキーホルダーと眠り猫の置物と三猿のストラップのどれがええと思う?」
「…絵ハガキでも買っとけ」
土産物売り場で忍足をあしらった跡部は、自宅に戻って開けたバッグの片隅に、その時自分が指差した絵ハガキが入っていたのに驚いた。
「あいつ…」
少しだけ苦笑いを浮かべて『思い出の日光』と書かれた絵ハガキを手に取った。
「バーカ…」
一枚ずつその絵ハガキを見て行くと、確かに合宿の日々が思い起こせる。
「修学旅行か…」
絵ハガキから窓の外へ視線を動かし、夜空を見た。
行きそびれた修学旅行。空白の半年間の隙間が埋まったように思えた。
『ま、ええやん』
忍足の声が浮かんだ。
「そうだな…」
もう一度手元の絵ハガキに目を向けると、そっとハガキのケースに戻し机の引き出しにしまった。
「まあ、いいさ」
fin.