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氷帝編〜Episode1〜*
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跡部くんが小気味よく笑った。
「ほな、野崎。どうせやったら歌のテスト、最高点狙ったらどや?」
「え…」
「ああ、いいかもな。榊先生はペーパー以外のテストは、めったに満点出さねぇからな」
その満点を、いつも取っているはずな跡部くんの目が笑った。
「しかし、ひと口に榊先生の度肝を抜く歌曲と言っても…」
跡部くんが試案気な顔をしながら眉を寄せる。
「『夜の女王のアリア』はどや?」
「『魔笛』か…。確かにあれなら…」
何だか私抜きで勝手に話が進んでいる…。魔笛?アリア?
「野崎は魔笛を知っているか?」
「…ううん、全然」
私は首を左右に振った。
「モーツァルトの歌劇や。夜の女王のアリアはその中で歌われとるんやけど、日本の歌劇界でも歌える人はそういてへんみたいやで」
「…えっ…それって難しいってこと…?」
私の心臓がひとつ、どくんと跳ねた。
「そうじゃねぇ、音域の問題だ」
「音域…?」
「ひとつだけ、音が跳ね上がるん。その音が…」
「出せねぇんだ」
「ひとつだけ…」
私は、二人を交互に見ながら幾度かまばたいた。
「そや、そのたった一音が難しいねん」
「日本の童謡にもあるな、出だし二音目でいきなりオクターブ跳ね上がる曲…」
跡部くんが面白そうに笑った。
「よし、決まりだ野崎。お前は夜の女王のアリアを歌え」
「ええっ! ちょっ…」
「テストは来週の授業からやし、明日から練習でも間に合うで」
二人は私にお構いなしに決めていく。勝手にプロデュースしないでよ! …と言いたかったけど、この二人に言われて無下に出来る人がこの氷帝にいるわけない。私だって例外じゃない。…悔しいけど…。
そして、テストの日。
クラスメイトは唖然、榊先生は椅子から立ち上がると盛大な拍手をしてくれた。
それ以来、私は自分に自信が持てるようになったと思う。コンプレックスだった体型も逆に生かす道が出来た。
あの日、あの時、同じ時代にいてくれた跡部くんと忍足くんに感謝を忘れない。
「よう、跡部。久し振りやんな。ああ、相変わらずや。そや、跡部んとこは届いたか?」
『ああ、野崎からの招待状だろ? 来たぜ。やりやがったな、あいつ…』