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氷帝編〜Episode1〜*
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「ハッ、クラシックに限り、だ。だが、榊先生の趣味に合えばかなり課題から外れた選択でもいけるはずだぜ」
跡部くんが、忍足くんを振り返ってニヤリと笑うのが見えた。
(そういえば、跡部くんもかなり歌は上手かったな…声もいいし…)
私は1年の時に跡部くんと同じクラスだったから、音楽の授業で歌う跡部くんを見ている。そんなことをぼんやりと考えていたら
「野崎は何を歌うんだ?」
跡部くんが、急に私に話の矛先を向けて来たので焦った。
「わ…たしは、まだ…。跡部くんや忍足くんみたいに歌上手くないし、声も全然だし…」
「あん…?」
「え…?」
私が歌の上手い二人に気後れしながら言うと、なぜだか二人は顔を見合わせた。
「野崎お前…」
「歌上手いで?」
「…え…?」
「聴いた音は外さねぇし、音感はちゃんとあるぜ」
「声やってうんと伸びるし、ええ声しとるよ?」
「ええっ!?」
「自覚ねぇのか?」
「そらもったいないわ」
二人に代わる代わる言われ、混乱した。私の…歌が…声が…。褒められてる…?
「ちょっと、声出してみろよ」
跡部くんが音楽室のドア間近から踵(きびす)を返すと、グランドピアノの蓋を開けて椅子に座った。
「俺の出す音について来い」
言うや否や跡部くんの指先は、しなやかに和音を弾き出した。
私は言われるまま、自分の耳を頼りに声を出した。
「もっと自信持ってや。腹の底から出してええねん」
跡部くんの音がどんどん高音域へ走る。置いていかれまいと私も必死にその音を追いかけた。
「出るじゃねぇか…これで軽く5オクターブだぜ」
「メゾからソプラノまでカバー出来るんやないか」
息を吸い込み直した私に二人が微笑んだ。
「…驚いた、自分で」
本当にそう思った。跡部くんの出す音について行けた自分の声。私にも出来るんだ…。
「野崎、お前声楽やったらいいんじゃねぇか?」
「そやな。今からなら充分音大狙えるやろ」
「え…音大って…声楽って…」
思ってもいない展開だ。目が白黒してしまう。
「だ…だって私、こんなチビだし…ポチャだし…」
二人の視線に我ながら困惑してしまい、関係ないことを口走る。
「アーン? 声楽家は身体が楽器だぜ? 痩せてちゃ声は響かねぇ。太く重く、上等だ」