青学編
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『花の香り』
夏とは言えまだ梅雨も明けぬ時期─
「すっかり遅くなってしまったな、手塚」
「ああ、時間の経過と言うものは時として思わぬ早さを感じる…」
部室の鍵を閉めながら、乾と手塚は日もとうに暮れ、どんよりと暗く立ち込めた鈍色に広がる空を見やりながらそれぞれにつぶやいた。
「さて、氷帝戦に向けての組み合わせだが…」
二人は部室を出で並んで歩きながらも、大会に向けてのディスカッションに余念がないようだ。
「…ん? 」
ふと、手塚が足を止め街灯以外は薄暗い、辺りを見回した。
「どうした? 」
「…いや、花の香りか…これは」
「ん? 」
乾も、くん…と鼻孔に湿り気を帯びた空気に混じる、仄かな甘みのある香りを確認した。
「ああ、白粉花(おしろいばな)だな。そら、その木の根元に咲いている」
乾は手塚のすぐ横で、街路樹として植えられているイチョウの根元を指差した。