夏の幻*
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「ありがとう」
あたしは、感謝の笑顔をリョーマくんに向けた。
「…妬けるね」
「ダブルスは、信頼関係が必須じゃからのう」
幸村の言葉に、くく…と仁王が忍び笑いをする。
風がいい具合に吹いてくれている。
呼吸を整える。
この一球で決める。
相手コートの死角を目指す。
千石さんも日吉さんもボールを追わなかった─
そしてボールはあたしの手元に戻って来た。
《ゲームセット・ウォンバイ越前、高寺》
「あ~やられた…」
大きくため息をつく千石さんと無言の日吉さん。
握手するため、ネットに向かおうとしたら、足が張り付いたように動かない。
(まずい…こんな大勢の前で、みっともない真似はしたくない…)
リョーマくんがあたしの傍に走り寄ると
「今だけ堪(こら)えろ。すぐ帰るからな」
小声で囁く。
「う…うん」
あたしもうなずくと、リョーマくんの差し出す手に、しがみつくようにして 震える足をコートから引き剥がした。
はたから見ると、仲良く手を繋いでネットに向かう図…だけど、あたしは必死だ。フラつかないように…皆にバレないように…。
あたしはネットに着く直前、跡部さんに視線を送った。
『もう、歩けない』…と。