帝王の庭*
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「なぁ、七星ちゃん、もう一回先輩言うてぇな」
「…先輩」
「名前つけてぇな」
「…忍足先輩」
「ちゃう、ちゃう。名字やのうて名前の方や。侑士や。言うてみてんか?ゆ・う・し」
「……………侑士先輩」
「…ええ…ええわぁっ!可愛いすぎるで七星ちゃんは~」
(…早く帰りたい)
「…なぁ。急にどないしたん?」
日吉さんが自分の席に戻ると、忍足さんが不意に真面目に聞いて来た。
「え…」
「いきなりそんなん、おかしいやろ?」
忍足さんは、空いているパイプ椅子に座ると、あたしを横目で見ながらそう言った。
(そりゃ当然よね…)
あたしは、部対抗のアンカーで出ることを、忍足さんに告げた。
「アンカー?跡部と代わったんか!」
「跡部さんがアンカーだったんですか!?」
「そりゃ部長やし、アンカーは花形やからなぁ」
「………」
「けど何でアンカーやの?」
「実は…」
あたしは仕方なく『真実』を話した。
「─日吉の奴!」
ガタッと椅子を揺らすと忍足さんは怒りの表情で立ち上がった。
「あっ!いいんです!忍足さん。あたし勝ちますから」
「─え…」
日吉さんに殴り込む勢いだった忍足さんが、振り向いた。
「勝算がなければやりません」
あたしは忍足さんを真っ直ぐ見た。
「…そうやな。七星ちゃんはそういう子やった」
気の荒さを落として、忍足さんは言った。
「んじゃ、距離は俺が稼いだる。七星ちゃんの前は俺や。2番手を引き離して、トップでタスキ渡したるわ」
自信満々に忍足さんはそう言ってくれた。
「ありがとうございます…侑士先輩」
「うひょ~ええなぁ~!もう一回!」
「何度も言いません」
いよいよ最終種目の部対抗障害物競争が始まった。
選手入場で怒濤(どとう)の悲鳴が上がる。
「跡部様がいない!」
(はい、ごめんなさい。あたしと代わりました)
「誰 あのチビ!」
(…女の子だと別に言われないんだけどな~。リョーマくん…苦労してるね)
「知らないわよ!」
(ごもっとも…青学ですから)
「でも意外に可愛いわよ」
(…は?)
「そうね。中性的魅力よね」
(あの…?)
「応援しちゃおうかしら」
(ありがたいんですけど…目つきが…)
「七星ちゃんは、男装してもモテモテやん」
前を歩く忍足さんが苦しそうに笑った。