帝王の庭*
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「男…テニ…?」
跡部さんがパイプ椅子の背もたれから体を起こすと、マジマジとあたしを見た。
「はい、臨時のマネージャーでも、新入部員でも、名目は何でもいいんです。あたしは星を取りに行くだけですから」
あたしはにっこり笑って、跡部さんを見た。
「……本気か…?」
呆れたような顔で跡部さんはあたしを見たけど、あたしはお構いなしに続けた。
「でも、アンカーの走る分野が競技側じゃなきゃ出ません」
それだけは言った。
「…アンカーは競技側だ」
跡部さんは団体競技が行われているトラックを見つめながら、そうつぶやいた。
「…たかが運動会だ。勝ち負けを騒ぐつもりはねぇが…氷帝男子テニス部の最終ランナー…の意味合いはわかっているのか?」
「ええ、あたしは勝ちます」
跡部さんは、忍足さんがあたしに追いつけなかったことを見ている…。
「くく…」
跡部さんが不意に笑った。
「なら、やってみるがいい。栄光を勝ち取るか、惨めな姿を晒(さら)すかは、お前次第だ」
「ウス」
「樺地か、丁度いい。部室に行って、一番小さいサイズの新しいユニフォームを持って来い」
それだけ樺地さんに伝えると、にっ…と笑ってあたしを見た。
「女子マネは置いてねぇからな。部員になって貰うぜ…しかし、お前小さすぎねぇか?」
ちょっと戸惑ったように跡部さんが言うから、
「氷帝の越前リョーマと思って」
と、かわした。
「…言ってくれるぜ!」
跡部さんは吹き出した。
あたしの想いなどお構いなしに競技は進んで行く。もうやるしかない。
(走れないなら、走らなければいい─)
跳び箱やマットで距離を稼いで、全力で走るゴール間近分の距離だけ温存すれば何とかなる─あたしはそう考えた。
「ねぇ、樺地さん。あたしあなたの手をお借りしたいことがあるんですけど…」
「ウス」
あたしは、とびっきりの笑顔で樺地さんに『お願い』をした。
「ウス」
「七星さん…?」
氷帝男子テニス部のユニフォームを着たあたしを見て、日吉さんは目を丸くした。
「日吉さん、あたし星を取ります」
「─えっ…」
日吉さん、驚いてる…。そりゃそうよね…この勝負、絶対日吉さんに有利だったもんね。
「ひわ…?七星ちゃん…?ど…どないしたん?」
忍足さんまで驚いた顔してあたしを見る。
あたしは、二人にお辞儀をして言った。
「本日だけの氷帝男子テニス部員、高寺七星です。よろしくお願いします。先輩」
「…ムッチャ可愛ぇやん。どないしよ…」
「………」
おどけたような忍足さんとは対照的に、日吉さんは無言だった。