トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「何かな?」
「そのケガなんだが……」
言いにくそうにぐるぐる巻きの包帯に薄い視線を寄越す。
「これ?」
右手を持ち上げる。
「そう、野生の獣相手に跡部を素手で守ったと聞いたら気にならないほうがおかしい」
素手で倒したのはヒグマじゃないけどね。チラッと忍足くんを見たら、ごくりと喉を鳴らした。興味津々じゃないか。
「うん、まあ、相手はコヨーテだったんだけど、その時現れたのが三頭と少なかったんで、とにかく大きい一頭倒せばいけるかな、と思ったんだよね」
「コヨーテ? 大きさはコリーくらいか。しかし犬より脚が長いし速い。体力も犬をはるかに凌ぐだろう」
(ああ、そういえば脚が長いから蹴りまくられたね)
自分の全身に及ぶ青アザや無残な爪の引っ掻き傷を思い出し、今更ながらによくやったもんだと思った。
「このケガは」
もう一度自分の右手を見ながら言った。
「コヨーテの気道を塞いで窒息させるために拳を作って口に突っ込んだ時のものだよ」
空気が張りつめて静まりかえるのがわかる。予想外の答えに聞いた柳くんも目を見開いた。
「追い払っただけじゃ、また着いて来るかもしれないし、なんとしても仕留めないと、と思ったんだ」
跡部も驚いた。跡部は跡部で自分に向かってくるコヨーテにひたすら石を投げ叫び続けていたからだ。
思い出すのは血まみれになった浩美の右手と傷だらけの姿だった。まさかそんな凄まじい戦いをしていたとは。
『私は跡部を守る!』
あの言葉が身に染みる。異世界で命を落としかねない状況だったというのに、本当に守ってくれた。
思えばグリズリーに遭遇した時も、自分を囮にして跡部を優先的に逃がそうとしていた。
「……!」
心が震えた。泣きそうになった。
涙はあの時、浩美の右手に捧げて以来流していない。
「本当にお前ってやつは……」