トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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変な感心をしながら、こちらもグリズリーと狼の動きに意識を向けた。
狼は私たちとグリズリーのどちらを獲物として見ているのだろうか。
先に動いたのは狼だった。
グリズリーの正面側にいる少し大きい狼が一歩踏み出すと、グリズリーもつられたように距離を取ろうとし、そのまま囲いがグリズリーの動きに合わせて移動した。
(今だ!)
狼を刺激しないよう、私たちもジリジリと彼らから離れた。
狼の集団は二手に別れることはなかったが、すぐにその場から駆け出すことも危険だから、安全とわかるまではそろりそろりと後ずさった。
「大丈夫か?」
どれくらい経ったのか、少年跡部の声にようやく緊張がほぐれた。
「なんとか。でも狼がいるなら他にも何かいるだろうし、急いでここから抜けよう」
「そうだな、急がねえと」
辺りはもう薄暗くなってきている。だが、熊も狼もいる場所での野宿なんて、何の準備も装備もなしではとてもじゃないが無理だ。
来た道は戻れない。ひたすらこの先を目指すしかない。
繋がれた手は離れないまま二人は黙って歩いた。
と、不意に跡部が立ち止まり空を見上げた。
「すげーな」
感嘆の声に私も黄昏から夕暮れに変わる空に目を向ける。
「……!」
まだほの明るさが残る空に敷き詰めたように広がる星々が、都会の暮れない夜空しか知らない自分の目に飛び込んできた。
満天の星とはこの事を言うのだろう。