トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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グリズリーが地を蹴った。
あの巨体が軽々と身を躍らせ一気に距離を縮める。
「てあっ!」
少年跡部が気合いの一声と共に、石の打球を続けざまに放った。
石は確実にグリズリーの顔面を叩いたが、怒りモード満載の生き物には効果があったのかわからない。
突進するグリズリーを軽やかにかわした跡部だが、相手の痛手を確認している間などない。すぐさま次の攻撃体勢に移った。
跡部にかわされ、暴走しながら向きを変えたグリズリーの怒り具合は更に加速しているようだ。
「危ない! 避けろ!」
今度は私のほうへ駆け出したグリズリーの背に、彼が石をヒットさせたが勢いは止まらない。
私はさっき手にした細長い枝を鞭のようにしならせて、グリズリーの鼻っ柱を叩いてやった。
一瞬怯むグリズリーに容赦なく鞭をお見舞いする。
それに回り込んだ跡部も参戦し、グリズリーは吠えつつも前足で幾度も顔をこすった。
だが、この程度の攻撃をいつまでも続けたところで、目の前の巨大熊を倒す事は無謀だろう。
(どうしたものか)
頭の中ではこの瞬間も、生存可能な作戦はないものか、と必死に考え出そうとしている。
跡部もまだ子どもだ。
あの中学生の体力には届かない。自分もスポーツ等しているわけでも、身体を鍛えているわけでもない。野生動物との長期戦は圧倒的に不利だ。
(何とかして彼だけでも守れないか……)
そう考えを張り巡らせていると、かすかに遠吠えが聞こえた。
(気のせいか……?)
少しずつ衰える腕の力を奮い立たせながら、もう一度神経を聴覚に集中させた。