トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「あっちだ!」
彼が素早く辺りを見回し、一瞬目を細めた先に大きな岩と、そこから自然に崩れた石の欠片がかなり地面に転がっている。
針葉樹から落下した枝も同じように折り重なっている。
彼は手頃な枝を鷲掴みにして引き抜くと、邪魔な小枝を払い石を拾い上げるやいなやグリズリーを睨みつけた。
「いくぜ! 熊野郎! お前は俺の後ろに下がってろよ!」
彼が空に放った石は針葉樹の枝の真芯を捉え、一直線にグリズリーの顔面へと飛んだ。
瞬間、獣の咆哮が響き渡り、巨体が崩れ両手で激しく顔をこすり地面をのたうち回る。
「よし! 今のうちだ、逃げようぜ」
成し遂げた満足感からか彼の笑顔が誇らしげに見えた。
「待って」
「あ?」
「グリズリーて、異様に執念深い上にめっちゃ足が速いんだって」
「なんだと?」
のたうち回るグリズリーが頭を幾度も左右に振り、鼻を鳴らしながら起き上がった。
「つまり」
グリズリーが立ち上がり両腕を上げ吠えた。どうも逆ギレしたらしい。
あの様子では怒りモード全開だ。
「完全に仕留めるか、グリズリーが逃げ出すか、諦めるか、まで持っていかないと執拗に追いかけて来るって話」
立ち上がった姿はやはり大きい。
3メートルクラスで間違いない。
「……さっき、足が速いって言ったよな? どれくらいなんだ?」
「100メートル8秒だって」
彼の目が点になった。
立ち上がったグリズリーが四つ足に戻り、こちらに向くともう一度鼻を鳴らし頭を左右に振った。
「来るよ」
私も細めの針葉樹の枝を取ると身構えた。
グリズリーと私たちの距離は100メートルもない。
2~3秒で来るだろう。