トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「お前、日本人、なの、か?」
不意に後ろから声をかけられた。
「え……」
振り返ると子どもが一人。
「……え?」
急に、本当にいきなりその子は現れた。
「ここは、どこだ?」
かなり走って来たらしく息が上がっている様子で、膝に手をつき汗を拭うと辺りを不安げに見回しながらその子は言う。
「え?」
私は馬鹿みたいに同じ返事をしている。
だってその十歳くらいの子どもはどう見ても……
「俺様はロンドンにいた。だが、ここは一体どこの山の中なんだ?」
幼い跡部景吾にしか見えないのだ。
「そうだね、まず最初の答えから。うん、私は日本人です。それから、ここなんだけど、どうやらカナダの国立公園みたいだよ」
「……カナダ、だと?」
私は気を取り直し、驚いて目を丸くするその子に自分の後ろの看板を指差した。
「ここに書いてある」
「……」
少年跡部と思える子は看板に近寄ると熱心に文字を追い、やがてうつむいてしまった。
「……気がついたら知らない車の中にいたんだ」
「え……?」
「家にいて、メイドに呼ばれて庭に出てからの記憶がねえ」
看板に手をつき足元を見つめ、その子は唇を噛むように語る。
「あいつらが、男の二人組だったが、電話をかけるために車から降りた隙をついて逃げ出して、がむしゃらに走り回って、気がついたらここに来ていた」
言い終わるなりストンと腰を落とし、看板の細い柱にもたれかかると黄昏始めた空を睨んだ。
「カナダ、だと?」
「あのさ……それってもしや」
その先を言い淀む私を尻目にその子は続ける。
「ああ、誘拐だ」