トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「おはよう、勉強はどう?」
朝の通学路で久々に顔を合わせた千晶に声をかける。
「まずまずかな」
いよいよ、千晶は来週から共通テストだ。
「なるようになるって、人事を尽くして天命を待つってこんな感じなのかな」
肌を刺すような凍てついた空気の中で千晶は笑った。
「あ、そうだ! 浩美に報告!」
「え?」
「行方不明だった人がね、昨日ひょっこり戻ったんだって」
「ほんと?」
「うん、まだ一人だけどね。研究所をあげて喜んでたよ」
よかった、と思った。
捜索の途中で別次元に呼ばれて……そう、私はあの時高校生の幸村精市の、これでもかという負の感情に呼ばれたんだと思う。
でも、あれは救難信号だったな、と今では思える。
誰に送るでもない宛先不明のSOS。
それをイーグルが傍受して、私をあの世界に送り込んだ。
私の過去をなぞるような高校生の幸村精市。
幸村精市が切原赤也と同じ学年にいたら、青学も氷帝も、四天宝寺や全国の強豪校も、さぞかし対処に頭を悩ますことだろう。
ひとつの世界の一人の人間が救われたから、代わりに次元の狭間に巻き込まれた人を一人、戻してくれたのかな。
入り組んだパラレルワールドの規律なんてわからないけど。
「ねえ、千晶」
「ん?」
「次の探索、私だけで行くから」
「え、なんで」
「千晶には勉強に専念してもらいたいんだ」
「浩美……」
「任せて、だから千晶も悔いのないように頑張って」
見上げた蒼空に、いつの間にかまっすぐ伸びた飛行機雲が白さを残していた。
「寒い! 浩美、早く」
「今いく」
冬本番。首をすくめる風がマフラーの隙間を通り抜けたけど、春は間近い。
飛行機雲と件名に書いて写真を送った。
切原くん、幸村くん、頑張ろうね。
fin.