トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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不意に背後から声をかけられ、焦って振り向いた先には幸村くん一人しかいなかった。
「みんなには先に行ってもらった」
「そう。うん、元の世界に戻るよ」
爆音が近づいてくる。
「そっか、残念だな。また、会えたりする?」
「ううん、多分この世界に二度と来ることはないよ。だから、さよなら」
そう言ってカッコよく立ち去るはずが、幸村くんにがっしりと手首を掴まれた。
「最後に、いい?」
「何かな?」
「キミ、俺のプレイ観てるよね? まあ、キミの世界での俺だけど」
いやいや、私の世界に幸村くんはおろか、テニスメンバーはただの一人もいないって。
などど今さら説明したって始まらない。私はもう帰らなければならないのだ。
「で、俺のプレイどう思った?」
「そうだね……はっきり言って共感は出来ないかな」
幸村くんの手が緩んだ。
「五感を奪われる苦しみを誰よりも知っている幸村くんだから、それをプレイに使って欲しくはなかったね」
「そうか……」
幸村くんの手が離れた。
「ただ、後からあれは技じゃないってわかった。いわばプレイの中での副産物で、幸村くんとしても意図してやりたいわけではない、と勝手に解釈してる」
幸村くんがちょっと驚いたようにまばたきする。
「幸村くんて、四天宝寺の白石くんに通じるのかも」
「白石に?」
そんなことを言われたのは初めてなのか、思い切り眉を寄せると顔をしかめた。
「うん、大技はなく基本に忠実。でも、その基本から繰り出されるプレイに誰もが魅了され翻弄される」
またちょっと目が見開いた。
「あくまで個人的な感想だから気にしないで。これ、中三の幸村くんにも言ったことないし」
それを聞いた幸村くんが微笑んだように見えた。
その時、音速のイーグルが一瞬にして病室内を突き抜けた、と思った。
さよならは言ったよね。
もう一度手を伸ばした幸村の指先は、何も触れぬまま止まった。
「俺は、何を……」
ゆっくりと引き戻した手のひらをただじっと見つめ続けた。