トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「まったく、一体どこまで同じエピソードを背負っていくんだか。私もね、同じなの。再手術に知り合った人の急死……」
その言葉に幸村くんの顔がこわばる。
「でも、同じなら安心して。私は生きてここにいる。幸村くんが受ける予定の手術、私は成功してここにいる」
「……そ、う、なんだ。あの、じゃ、これは……」
力強く椅子から立ち上がり、腰に両手を当てた私に幸村くんはいくらかの戸惑いを見せた。当たり前か。
「手術前に千晶がくれたの。手術中ずっと手首に縛りつけておけって。千晶も対のリボンを手首に巻きつけておくから、万が一にも私が逝きそうになったら全力で引き戻すって。手術、予定より長引いて夜から朝まで10時間以上かかったのに、一睡もしないでリボン握りしめていてくれた……自分に出来ることはこれくらいしかないからって」
「そ、う」
見開いた眼差しで、幸村くんはただじっと手のひらのリボンを見つめた。
浩美ファイト!と細いペンで書かれた文字は、リボンの繊維に沿って滲んではいるけれど、今も力を与えてくれる。
「今の私にはイーグルがいるからね、音速で引き戻せるよ」
「……頼もしい、ね」
私を見上げる幸村くんの瞳が穏やかに緩んだ。
「待ってくれ、一ノ瀬さん」
柳くんが割って入るように片手を挙げた。
「すまない。せっかくの厚意だが、それは一ノ瀬さんが友達から贈られた、かけがえのない命のリボンだ」
(ありきたりかもだけど、かけがえのないもの、かな)
「俺たちは、俺たちのかけがえのない仲間のために自分たちでリボンを用意したい」
「ああ! そっスよね! さすが柳先輩! それなら立海カラーで丈夫で頑丈でぜってー切れねえワイヤーみてえなロープがいいっスよ!」
「切原くん、それでは工事中みたいですよ」
切原くんの提案に皆が笑った。
怖さが少しでも遠のけば、と私は思った。
(幸村、後は勇気だけだよ)